「慰霊の日」の23日、玉城デニー知事は平和宣言で「安全・安心で幸福が実感できる島」を目指すと誓った。沖縄全戦没者追悼式は昨年に続き、新型コロナウイルスの影響で規模を縮小し、菅義偉首相もビデオメッセージの参加となった。玉城知事は宣言で、名護市辺野古の新基地建設を「唯一の解決策という考えにとらわれることなく」と政府に見直しを求めたものの、公約に掲げた「断念」「反対」などの表現は避けた。
新基地建設に関する設計変更申請を不承認とするよう玉城知事に求め、ハンガーストライキ(ハンスト)を続けた沖縄戦遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」の具志堅隆松代表とも面談。沖縄戦から76年たつ今も地中に残る遺骨を探す遺族の思いに耳を傾けた。
柔和な宣言
米軍基地問題に踏み込まない平和宣言。県幹部は、沖縄の現状を鋭く「告発」した翁長雄志前知事と異なる、柔和な「デニー流だ」と説明する。それでも「言うべき事は言っている」と胸を張る。玉城知事は記者団の取材に「(世代や県内外を問わず)より受け止めやすい表現を考え、用いていると理解してほしい」と宣言の意図を語った。
英語やしまくとぅばを交える一方、抽象的な表現をちりばめた内容に、与野党県議から「言葉が浮いている」「さびしい」「ポエムのようだ」との声が相次いだ。平和宣言は県職員が案を作り、三役調整をへて知事が決める。ある与党幹部は「ここまでインパクトがないなら、県民を交えた起草委員会を立ち上げた方がいい」と厳しく指摘した。
「頑張れ」の声
追悼式の後、玉城知事は平和祈念公園内でハンストをする具志堅代表を訪ねた。戦没者遺族の話や設計変更申請の不承認を求める説明に、時折、うなずきながら聞き入った。面談を終えた玉城知事に、集まった市民らから「頑張れ」と声援と拍手も飛んだ。
面談が決まったのは前日の22日。「少しも立ち寄らないのは悪印象」と知事周辺から意見が上がったためだ。設計変更を巡り、県がこれまで沖縄防衛局に出した質問書では、遺骨については触れていない。具志堅代表は玉城知事に「(設計変更は)人道的に認められないと盛り込んでほしい」と強く求めた。
玉城知事は申請を不承認にする構えだが、最終判断は7月以降の見通しだ。具志堅代表が知事の本気度に「不安を覚えている人もいる」と投げ掛けると、玉城知事は「言葉足らず、力足らずで申し訳ない。できることを一生懸命やりたい」と語った。
(池田哲平、明真南斗、塚崎昇平)