モバイル市場でどう生き抜く?  沖縄セルラー新社長の戦略


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沖縄セルラー電話の菅隆志社長=24日、那覇市松山の沖縄セルラービル

 6月で創立30周年を迎えた沖縄セルラー電話(那覇市)は、17日付で菅隆志氏が新社長に就任した。携帯電話やスマートフォン、高速通信環境の普及とともに、創業から順調に経営拡大してきた。一方で、中核となるモバイル事業は格安化で競争環境が激化しており、新規事業にも力を入れる。UQコミュニケーションズ社長などを経てきた菅氏に、沖縄セルラーの今後の戦略などを聞いた。

 ―創立30周年を迎えた。モバイル事業の現状は。
 「前年度は9期連続の増収増益、20期連続の増配を達成できた。今期も増収増益を見込んでいる。緊張感を持って、市場の先を読みながら先手を打っていかないといけない。良い流れを絶やすことなく成長軌道を継続させる」
 「現在、携帯電話の県内シェアは5割となっている。楽天モバイルが携帯会社の4社目として本格参入し、競争環境が大きく変化した。通信料金が値下げとなり、格安シフトが急激に起きている。手数料や違約金の見直しでキャリア間の移動もしやすくなっている。現状を維持するだけでも環境が厳しく、今後の数値目標を上げるのは難しい」

 ―そうした環境下で、どう戦略を描くか。
 「安心で使い放題のau、リーズナブルで分かりやすいUQモバイル、ネット専門で格安のpovoという三つのマルチブランド戦略を立てている。生活スタイルや使い方に合わせて提案する。特にUQモバイルが幅広いお客さんに受け入れられており、販売拠点を強化する。auショップでの取り扱いは一部店舗だったが、7月からは全72店舗で取り扱う。沖縄全体で接客できる体制を取る」

 ―5G(第5世代移動通信システム)の基地局整備は。
 「今年3月末までに90局を整備し、(通話エリアの)人口カバーは20%となっている。2022年3月までに390局まで増やし、沖縄本島の90%の人口をカバーできるようにする。人が多く集まる場所を中心に展開し、その後、離島にも広げる。5Gの周波数は直進性が強く、障害物に弱い。建物などへの浸透性が高い既存のLTEを組み合わせて、エリアを構築していく」

 ―新規事業も積極的に進めてきた。
 「アグリビジネスやヘルスケアが伸び始めている。イチゴは月に約10万粒を収穫し、台湾や香港など東南アジアに輸出する準備をしている。無農薬で味も好評を得ており、期待できる」

 ―新型コロナウイルスの影響は。
 「テレワークによる通信需要の増加などプラスの面があった。各企業の働き方が大きく変わって(会社の)座席を絞る企業も出ており、アフターコロナになってもテレワークはある程度浸透すると思う。DX(デジタルトランスフォーメーション)や、ロボットで作業の自動化を図るRPAなど、グループ企業が持つサービスを活用して法人事業を伸ばしていく」

 (聞き手 中村優希)