「カクテル・パーテイー」作品名に複数案 沖縄初の芥川賞作家、大城立裕さん手書き原稿で確認


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
大城立裕氏

 作家の故・大城立裕氏が執筆し、1967年に沖縄初の芥川賞を受賞した小説「カクテル・パーティー」の作品名の候補として他に「祝祭と仮面」「海の虚像」など、複数の案があったことが分かった。手書きの生原稿を所蔵する日本近代文学館(東京都)で県立泊高校の国語科教諭の金城睦(あつし)さんが確認し、作品名や原稿の変更点を「改稿過程の研究」として論文にまとめた。識者によると、沖縄の主な作家の改稿過程について論文にまとめた例は少なく、大城氏の作品への理解を深めていく上で意義深い視点の一つとなっている。

 小説「カクテル・パーティー」は、文芸誌への掲載で2回、単行本や文庫本として4回刊行され、少なくとも計6回の出版物が確認されている。

金城睦さん

 日本近代文学館で所蔵する手書きの生原稿は「新沖縄文学4号」(1967年2月、沖縄タイムス社)や「文藝春秋 昭和42年9月特別号」(67年9月、文藝春秋社)に掲載されるより前の段階とみられるという。

 生原稿のうち作品名を記した表紙は「夜の理想について」や「祝祭と仮面」「海の虚像」の文字に線が引かれ、削除されている。「カクテル・パーティー(の告発)」と書いた後に「(の告発)」の部分にも線で消去されている。

 金城さんの論文は26日、オンライン形式で開く沖縄文化協会の公開研究発表会で報告される。
 (古堅一樹)