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若い世代の視点「希望に」 女性の政治参画、動き広がる<「女性力」の現実 政治と行政の今>28


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田中麻乃氏(右)と談笑する恩納村観光協会の宮崎るみ子会長=5月15日、恩納村観光協会

 5月15日、恩納村女性活躍の会(宮崎るみ子会長)の呼び掛けで、「恩納村のジェンダー状況を考える」と題した講演会が村などの協力を得て、恩納村ふれあい体験学習センターで開かれた。講師に那覇市出身で長野県白馬村議会議員の田中麻乃氏(38)を招き、約70人の村民が集まった。

 恩納村は持続可能な開発目標(SDGs)の達成に取り組む自治体として、2019年度に国のSDGs未来都市に選定された。一方、現在、村議会の女性議員はゼロだ。SDGsの17ゴールのうち、ゴール5「ジェンダー平等を実現しよう」について、政治分野の取り組みが遅れている。

 宮崎るみ子会長(62)は村観光協会の会長も務める。「村内の団体組織で女性のリーダーは私一人。後に続く女性リーダーが育ってほしい」と話す。

 田中氏とは昨年11月、白馬村の職員らが観光事業の連携を模索するため、恩納村を訪れた際に出会った。3月下旬、本紙の連載で田中氏が議会で男女同数を目指す「パリテカフェ@信州」で活動していることを知り、講演会を企画。運営に当たって4月、恩納村女性活躍の会を発足した。

 「日本の政治や村議会は、ジェンダーの問題で取り残されている」と、宮崎氏は話す。親から「男は台所に立たせてはいけない」と教えられた世代。それが当たり前で子育てや仕事をしてきたが、過酷だった。「出産も育児も、みんなでカバーする社会をつくる。何かを犠牲にするのではなく、自分がやりたいように生きることが一番大切ではないか。男性が育児や家事をやるのが当然とされるように、団塊世代や私たちの世代が一番変わらないといけない」と語る。

 恩納村では2014年以降、女性議員が輩出されていない。講演会で田中氏は、来年9月の村議選で「若手の女性を落とさないように村を挙げて応援してほしい」と呼び掛けた。
 講演会の参加者は約7割が女性だった。会場から「女性を入れると、現職の議員を落とすことにならないか」(女性)、「今いる環境で声を上げづらい女性はどうしたらいいか」(男性)などの質問が寄せられた。

 田中氏は「新しい人や発想を加えることが村の未来につながる」と説明。自身も「ママ友」の声を聞いて予算化できた子育て支援策があるとして、「『政治は生活だ』というように、小さいところから声を上げ、それを届ける議員になることから進めたらいいのではないか」と提案した。

 講演会の後、恩納村は女性の社会参画を高める取り組みとして、子育て世代の母親が働き続けるために就労現場の現状と課題を共有する、定期的な座談会の実施を検討している。

 女性議員を増やそうという取り組みは各地で広がる。今年2月末、県内の政治分野で女性の進出を後押しする「クオータ制で女性議員増をめざす会」(共同代表・狩俣信子元県議)が発足した。女性議員ゼロの県内12町村(当時)で女性議員の当選を目指すほか、国会や各政党で男女の比率がそれぞれ40%を下回らないように割り当てるクオータ制の導入を求めている。

 女性の政治参画を後押しする取り組みが活発化していることを受け、昨年10月から県内で男女同数の議会を目指す「パリテカフェ@沖縄」を運営する元参議院議員の糸数慶子氏(73)は「女性を増やす取り組みは、党派を超えてつながることができる」と、さらなる期待を寄せる。

 「若い人たちは議論で世の中を変えるエネルギーがある。世代交代し、若い人たちの視点で新しい政治を作っていく。世界とつながりつつ、活動は足元から。そういう政治を目指したい。そこに希望がある」

 8月には女性や若者の政治参画を進めるため、会員制ネットワークの設立を予定している。勉強会で議論の手法などを学び、女性や若手の政治家、支援者の育成を手掛けていく予定だ。 (比嘉璃子)
 (おわり)

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 世界的にも遅れている日本の「ジェンダー平等」。玉城県政は女性が活躍できる社会の実現を掲げ、県庁内に「女性力・平和推進課」を設置しましたが、政治や行政分野で「女性の力」を発揮する環境が整わない現状があります。女性が直面する「壁」を検証します。報道へのご意見やご感想のメールはseijibu@ryukyushimpo.co.jpまで。ファクスは098(865)5174

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