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津波、夢への跳躍 足の痛みに耐えつかんだ五輪切符「沖縄、日本代表の自覚持つ」


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東京五輪代表選考会を兼ねた陸上の日本選手権最終日は27日、大阪市のヤンマースタジアム長居で行われ、男子110メートル障害は泉谷駿介(順大)が13秒06の日本新記録で初優勝した。金井大旺(ミズノ)が2位、高山峻野(ゼンリン)が3位。3人は東京五輪代表に決まった。男子200メートルは小池祐貴(住友電工)が20秒46で初優勝し代表に決定。同走り幅跳びは橋岡優輝(富士通)が大会新の8メートル36で2年ぶり4度目の優勝。7メートル91で2位の津波響樹(那覇西高―東洋大出、大塚製薬)、3位の城山正太郎(ゼンリン)まで3人が代表入りした。女子走り高跳びの徳本鈴奈(友睦物流)は1メートル70で6位、同400メートル障害の津波愛樹(中部商高―福岡大4年)は59秒41で7位、男子砲丸投げの金城海斗(那覇西高―鹿屋体育大2年)は17メートル16で8位だった。女子5000メートルは広中璃梨佳(日本郵政グループ)が15分5秒69で初優勝。2位に入った新谷仁美(積水化学)とともに、1万メートルに続き代表となった。この種目で既に代表入りしていた田中希実(豊田自動織機TC)が3位。女子200メートルは児玉芽生(福岡大)が23秒46で勝ち、100メートルとの短距離2冠を飾った。

◆津波響樹、足の痛みに耐え五輪つかむ

男子走り幅跳びに出場した津波響樹=ヤンマースタジアム長居

スタート位置に付き、両手を振りながら理想の跳躍をイメージする。上体を後ろに下げて力をためてから、一気にスタート。東京五輪への切符が懸かる中、「今までで一番緊張した」という心をいつものルーティンで静め、津波響樹が1回目の試技に入った。大きなストライドで一気に加速し、踏み切り板にピタリと合わせて宙へ。「調子は良かった」といきなり大台に迫る7メートル91を記録し、12人中トップに。

しかし、ここでアクシデントが襲う。踏み切る時に「たたく癖が出てしまった」と強い力を加え過ぎて左足首をひねり、痛みが生じた。監督から次をパスするか確認されたが「五輪で上を目指すからには8メートルを跳びたい」と続行を決意。さらにライバルの橋岡優輝が3回目で8メートル27の大ジャンプを見せ「火が付いた」と一層気合が入った。

しかし、その後は徐々に痛みも増し、「ちょっと怖がってしまった」と最後まで1回目は超えられず。五輪代表内定には胸をなで下ろしたが、高みを見詰めているからこそ「記録的には悔しい結果」と試合中にほとんど笑顔はなかった。

五輪本番まであと1カ月。足を痛めながらの踏み切りを念頭に「逆に、うまく踏み切れればブレーキをかけずに前にいけることが分かった」と越えるべき課題も見えた。県勢では陸上での五輪出場2人目という快挙に「沖縄、日本の代表として自覚を持ってやりたい」と奮い立つ。日の丸を背負い、世界最高峰の舞台で東京の空へ駆け上がる。
(長嶺真輝)


<津波響樹 略歴>

 つは・ひびき 1998年1月21日生まれの23歳。豊見城市出身。168センチ。伊良波中―那覇西高―東洋大出、大塚製薬。小柄ながら100メートルを10秒台前半で走る脚力を武器に、大柄なトップ選手たちと渡り合う。2015年の全国高校総体6位。大学2年時に初めて8メートルの大台を超え、19年8月のナイトゲームズ・イン福井で五輪参加標準記録を1センチ上回る8メートル23の自己ベストを記録。同年に世界選手権に初出場し、20年には県勢50年ぶり、3人目となる日本選手権制覇を果たした。