沖縄の子へ教育基金 支援を決めたWUB創設者・ロバート仲宗根さんの思い


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ロバート仲宗根さん(提供)

 沖縄科学技術大学院大学(OIST)財団はこのほど、世界ウチナーンチュ・ビジネス・ネットワーク(WUB)創設者でハワイの県系人、ロバート仲宗根さん(83)から寄付を受け、仲宗根さんの両親の名前を冠した「仲宗根松郎・ツル子基金」を設立した。移民として沖縄を支援し、教育を重視した両親のように、仲宗根さんも沖縄の子を支援する。特に女子学生のSTEM(科学、技術、工学、数学)教育の支援に力を入れるという。

 仲宗根さんと、ハワイ県人会元会長のエドワード久場さん(77)は6月29日、琉球新報のインタビューに応じ、基金設立の背景や沖縄が目指すべき将来について語った。

 仲宗根さんの両親は1920年に沖縄からハワイに移住した。安い賃金でサトウキビやパインの栽培に従事し、生活は苦しかったが、やがて同郷の県系人から支援を受け、レストラン経営を成功させた。教育を大切にし、仲宗根さんを含む6人の子ども全員を大学へ送り、そのうち5人は科学技術を学んだ。

 仲宗根さんは「ウチナーンチュがハワイに渡ったのは沖縄にお金を送るためだった。自分たちも安い給料で大変だったのに、故郷を支援していた」と1世の苦労や心境を代弁した。

 仲宗根さんが基金を設立した背景には、ハワイの県系人の故郷を思う気持ちや石川市(現うるま市)出身者から得た「ゆいまーる」、教育を大切にした両親の教えがある。

 仲宗根さんが女子学生のSTEM教育に力を入れる理由は、沖縄の女性が「アンユーティライズド・リソース(未活用の資源)」となっている現状を変えるためだという。「ハワイの女性の地位は組織内で上がっている。エンジニアも多い」と強調。「日本のように(飲み会などの)付き合いがいいから上がるんじゃなくて、頭がいいから上がる。そうじゃないといけない」と、女性の能力が正当に評価されることを願った。

エドワード久場さん(提供)

 久場さんは、ハワイ州が2018年に実施した調査で、ハワイの県系人は教育水準や世帯所得、住宅所有率が、ほかのコミュニティー(先住民や沖縄以外の海外移民)よりも高いことが判明したと紹介し、「教育を大切にしたことで、子や孫がSTEMに関わる仕事に就くことができた」と要因を分析した。

仲宗根さんは沖縄の将来について「(物流がネックとなる)モノよりアイデアを作ることだ。だって、アイデアに重さはないでしょう」と助言。女子学生に対しては「あなたは何でもできる」とエールを送った。 (稲福政俊)