沖縄総合事務局長、緊急宣言中に離島出張 観光情報を収集 専門家苦言「自粛求める側」


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  吉住啓作局長

 沖縄総合事務局の吉住啓作局長が、新型コロナウイルスの緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の対象だった5月に、来島自粛を求めていた久米島町と北大東村へ出張していたことが2日までに分かった。同局が制作している沖縄観光PRサイト「オキナワンパールズ」で使用する写真の撮影や情報収集が目的だった。専門家は、医療体制が脆弱な離島にウイルスを持ち込めば、医療崩壊につながりかねないと指摘している。

 2日、本紙の取材に応じた吉住氏は「批判が出ることも承知していたが、不要不急の出張ではない。この時期に取り組むべき大切な公務だった」と述べ、判断は妥当だったと強調した。

 吉住氏は久米島町に、緊急事態宣言下だった5月26、27日、事務局職員2人と訪問した。町は来島自粛を求めたが、吉住氏から複数回申し出があったため、感染防止対策の徹底や大田治雄町長と面談しないことを条件に受け入れに応じた。町職員が文化財や史跡約10カ所を案内したという。

 町の関係者は、観光PRにつながる部分もあり受け入れたものの国の機関からの申し出は断りづらかったとし「時期的には訪問を控えてほしかった」と述べた。

 吉住氏は6月上旬、竹富町と宮古島市にも訪問を打診したが、両市町は緊急事態宣言を理由に断った。

 北大東村へはまん延防止等重点措置の対象期間だった5月19、20日に訪問。宮城光正村長とも面談した。

 吉住氏は「沖縄の経済を戻すには、観光業の復活が鍵」だとし、観光地競争が予想される9月までに、サイトに全41市町村の情報を載せる意義を強調した。その上で「質の高い観光と観光客誘致のため、5月からラストスパートで準備する必要があった」と訴えた。

 群星沖縄臨床研修センター長の徳田安春医師は、感染症に対する備えが脆弱な離島にウイルスを持ち込めば、医療崩壊につながりかねないと問題視し、「国民に自粛を求める側の国の重役として不適切な判断だった」と苦言を呈した。

 河野太郎沖縄担当相は2日の会見で記者団の質問に「詳細を知らない。総合事務局に聞いてほしい」と述べるにとどめた。