辺野古サンゴ訴訟 最高裁の判決理由と反対意見の要旨


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埋め立てや護岸工事が進められる新基地建設現場=2020年9月3日、名護市辺野古(小型無人機で撮影)

 【判決理由】

 県はサンゴ類移植の正当化には普天間飛行場の代替施設の設置という埋め立て事業の目的が達成される見込みを要するとし、是正指示の時点では地盤改良工事を追加する変更申請すらされていなかったことから、サンゴ移植の申請内容に必要性を認めることができないと判断した。

 しかし、沖縄防衛局は公有水面埋立法上、埋め立て事業のうち軟弱区域外における護岸工事を適法に実施し得る地位を有していた。移植申請されたサンゴ類は護岸工事で死滅する恐れがあった以上、漁業法などの目的を実現するためにはサンゴ類を避難させるべく移植する必要があった。埋め立て承認により、環境保全などに十分配慮されているという公有水面法の2号要件に適合すると判断されている。

 移植申請の目的は、環境保全措置の実施にあった。県の判断は護岸工事を事実上停止させ、適法に実施し得る防衛局の地位を侵害する。県の判断は裁量権の範囲の逸脱またはその乱用に当たる。当然考慮すべき事項を十分に考慮していない一方で、考慮すべきでない事項を考慮した結果、社会通念に照らし著しく妥当性を欠いている。福岡高裁那覇支部の判断は是認することができる。

 【反対意見】

 裁判官宇賀克也の意見は次の通り。県の判断が裁量権の範囲の逸脱や乱用として違法とは言えない。

 設計変更が不承認になった場合、サンゴ類の生息箇所のみの工事は無意味になる。移植が無駄になり、水産資源保護法の目的に反する。護岸工事という特定の工事のみに着目して申請の是非を判断すれば「木を見て森を見ず」の弊に陥る。

 指示の時点で県が判断できないとしたのは情報が十分に得られなかったからで、県の責に帰すべき事案ではない。

 裁判官宮崎裕子は宇賀裁判官に全面的に同調する。指示の時点では埋め立て工事を実施できるかどうか不確定だった。埋め立て承認でなされた2号要件適合性の判断は実質的に無意味になっている。移植が環境保全措置に該当しているとは判断できない。