【記者解説】辺野古サンゴ訴訟、5人中2裁判官「初の反対」のインパクト 沖縄県が一矢


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(資料写真)

 農林水産相の是正指示を違法ではないとの判断を維持した6日の最高裁判決は、辺野古の新基地建設を強引に進める国の姿勢を追認するものだ。

 ただ、5人の裁判官のうち2人が反対し、意見が割れた。国の手法を手放しで認めたわけではなく、県が一矢報いた格好とも言える。

 新基地建設を巡る県と国の訴訟で、最高裁判決に至ったのは3件目で、反対意見が付いたのは初めて。軟弱地盤の判明による設計概要の変更申請が見込まれていたことから、移植を許可するかどうかの情報が十分に得られていなかったとして、県の対応を「違法とはいえない」とした。

 反対意見はこれまでの県の主張を認める内容で、玉城デニー知事は記者会見で「県が主張してきたことは、行政法の観点から合理的で正当性があると確信した」と前向きに捉えた。

 発端となった農相の是正指示は、沖縄防衛局によるサンゴ類の移植申請について県知事が判断する前に、「許可せよ」と迫るものだ。県が長らく判断を示さないのが問題なら、単に判断を急がせるという選択肢もあった。促すだけにとどまらず、許可を命じるのは、県の判断に国が干渉するものだ。

 地方自治法は、国と地方自治体の関係を対等と位置付けている。辺野古を巡る国と県との訴訟で、県は地方自治の重要性を繰り返し訴えてきた。国は県との対話に応じ、解決の道を探るべきだ。

 (前森智香子)