児童生徒の新型コロナウイルス感染防止対策の一つとして5月31日、県庁内の新型コロナウイルス対策本部に発足した「学校PCR支援チーム」。発足に伴い、学校関係者で陽性者が出た場合は、教職員が濃厚接触者に該当する児童生徒の唾液検体を回収し、検査センターへ運ぶことになった。県や関係者からは「感染者の早期発見につながっている」と評価する声が上がり、一部の自治体からは「保護者などにも対象を拡大してほしい」との要望も出た。一方、学校現場からは業務負担と感染への不安を訴える声が噴出している。
6月上旬、本島中部の高校の保健室で養護教諭の女性がため息をつきながら余った検査キットを見せた。「実際にやってみると、改善点の多さにびっくりする」。疲れた様子で、検体回収した当日のことを振り返った。
当日は晴天。対象生徒は約100人。学校の敷地内で、ドライブスルー方式で検体を回収した。教職員はマスクに手袋、ごみ袋で作った防護服を身に着け作業に当たった。唾液は青色の容器に5ミリリットル、保護者の車の中で、生徒自身に採取させた。「高校生だからすぐ採取できるだろう」との予想に反して、90分かけて約10人分しか回収できなかった。
唾液採取後の容器はチャック付きのポリ袋に入れて、生徒自身が車から外に手を伸ばし、教職員が持つ回収袋に入れた。慣れない作業で、思わず検体に手を伸ばした教職員もいた。
屋外での長時間の作業は熱中症の危険性があり、額から流れる汗を、検体回収している手で無意識に触ってしまう場面もあった。結局、回収に終日かかった。
「対策をしていても不安は大きい。もし感染したら労災は適用されるのか。県は教職員のリスクや不安を払拭(ふっしょく)できるほど議論をしたと思えない」と憤った。
回収した検体は、その日で検査センターに運搬できない場合、学校の冷蔵庫で保管する。中部の高校に勤務する40代の養護教諭は「本当に安全と言えるのか。学校でここまでやる必要はあるのか」と訴えた。
県議会文教厚生委員会で5日、県教職員組合(沖教組)と県高等学校障害児学校教職員組合(高教組)が提出した「学校でのPCR検査に係る検体採取業務に教職員を従事させないよう求める請願」が採択された。しかし県によると「学校でのPCR検査は、当初から検体の採取を教職員に求めてはいない」として、これまで通り唾液検体の回収と運搬を教職員に協力を求める。
県によると6月25日までに小中高99校、3271人の検査が実施され、27人の陽性者が見つかった。