日本兵による住民殺害に避難民は動揺します。照屋次央(つぐひさ)さん(85)=浦添市=の家族は危険を感じ、新たな避難場所を求めて再び山中をさまよいます。
殺された夫は英語が堪能だったことからスパイを疑われたという噂が広がりました。
《家族が出て行かなければ、日本軍は壕に手りゅう弾を投げ込んだだろう、と住民は動揺していた。壕の周辺は阿鼻地獄の状態になった。
数十人の避難家族でごった返していた。負傷者もおり、鼻をつく臭いがした。父はここでは危ないと悟ったのか、さらに険しい山道や谷間をさまよった。途中、水を求めて行くと、水は血で濁り、ところどころに虫が浮いていた。虫を払いのけ、両手で水をすくって飲み、喉を癒やして歩き続けた。》
その途中、負傷して助けを求める少年やお年寄りと出会いました。
《片足を飛ばされた15歳くらいの少年兵が苦しみもがき「おかーさん、おかーさん」と泣いていた。内臓が飛び出た老人が「水ください、水ください」と懇願していた。それを横目で見ながら、振り切って逃げ続けた。
胸が張り裂けるほど悲惨な状況だったが、自分自身が助かることが精いっぱいで、どうすることもできなかった。今もそのことが胸に焼き付いていて、思い出したくありません。》