岡本尚文写真展トークセッション 本土に向けた「ひとつの皮肉」 沖縄の「アメリカ」を本に


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 上里 あやめ

 写真家の岡本尚文さんと伊波リンダさん、批評家の北澤周也さんのトークセッション「写真を撮る/見る/考える」が4日、那覇市のホテルアンテルーム那覇で開かれた。同ホテルで開催中の「岡本尚文写真展」にちなんで開かれ、一般参加者30人に加え、マスコミ、関係者など合わせて約40人が訪れた。来場者は3人の掛け合いを通して写真家と撮影対象との距離感、突き動かされる思いなどに聞き入った。

対象との距離感などをテーマにしたトークセッションで語る写真家の岡本尚文さん(左から3人目)と、批評家の北澤周也さん(同4人目)、伊波リンダさん(同2人目)=4日、ホテルアンテルーム那覇

 岡本さんは東京出身。1979年、高校3年生の頃に初めて沖縄を訪れた。岡本さんは沖縄特有の色濃い「アメリカっぽさ」や、旧盆に繰り広げられるエイサーのプリミティブ(原始的)な雰囲気に「がつんとやられ、沖縄通いが始まった」と振り返る。

 約40年にわたり沖縄の風景などを撮影し、これまで写真集「沖縄01外人住宅」「沖縄02アメリカの夜」などを発刊した。北澤さんから表現活動の立ち位置を問われ、岡本さんは「沖縄とアメリカを見ている自分は、沖縄側に常に見られている。沖縄に憧れて付き合いが始まったが、沖縄を題材にして自己表現することはしたくない」と語る。沖縄に溶け込んでいる「外人住宅」、沖縄の夜の景色の中にオレンジの光とともに現れる“アメリカ”を捉えた「アメリカの夜」などの作品に触れ、本土に対して「(作品が沖縄からの)ひとつの皮肉として存在するかもしれないと思いつつ撮っている。ささやかに抵抗している」と言及した。

 北澤さんは県出身の伊波さんに対して「沖縄で生まれ育ったからこそ(写真家として)こうあるべきというのはないか」と尋ねた。伊波さんは「こうあるべきと考えずに撮りたいものを撮っている。(沖縄で)生活しているから自然に生まれてくる。強迫観念とは違う気持ち」と答えた。

 岡本さんはこれまでの写真集について「『外人住宅』は建物の写真で、そこにだれが住んでいるのかは放りっぱなしだった」と振り返る。沖縄の建物を通して、暮らす人びとの声(記憶)から歴史をひもといた「沖縄島建築」は、岡本さんが監修・写真を手掛けた。「ひとの家を訪ねて(住人に)話を聞き、住んでいる人の物語を撮影した」と語った。今後に向けて「写真と文章が一緒になって想像力を刺激するような作品を作ることができたらいい」と抱負を語った。

 「岡本尚文写真展」は8月29日までホテルアンテルーム那覇で開かれている。入場無料。