渡名喜島沖の在沖米海兵隊CH53E大型輸送ヘリのコンテナ落下事故で、またしても県への連絡体制不備が露呈した。県は6月のうるま市津堅島のヘリ不時着事故を受け、事件事故発生時の迅速な連絡を国や米軍に申し入れたばかりだった。一方、渡名喜島から4キロ離れた入砂島の出砂島射爆撃場が、米海兵隊の戦略構想の変化と共に、訓練拠点として機能していることが浮かび上がった。
事故の発生は13日午後0時半ごろ、沖縄防衛局から県に一報が入ったのは午後4時ごろだった。徐々に情報が入り、つり下げ中の落下事故だったことが判明したのは夜だった。謝花喜一郎副知事は14日、報道陣の取材に「一報は『意図せず落とした』という話で、後でつり下げということが分かった」と説明した。
津堅島ヘリ不時着事故も県に一報が入るまでに時間を要しており、米軍などに改善を求めていた。玉城デニー知事は2日、就任あいさつで県庁を訪れた小野功雄沖縄防衛局長にも「万一事象が発生した場合の一報、初動対処をお願いしたい」と念を押していた。
島全体が米軍の射爆撃場になっている入砂島は近年、敵地の離島を占拠し、臨時の拠点とする米海兵隊の「遠征前方基地作戦(EABO)」の訓練拠点にも使用されている。6月には海兵隊と海軍の工兵隊が共同で陣地壕の構築訓練などを実施していた。
1972年の沖縄の日本復帰時に、在沖米軍基地の使用目的を定めた「5・15メモ」では、同射爆撃場の用途は「空対地射爆撃」とされている。近年の上陸訓練の実施から用途が変化していることがわかる。
海兵隊は、島でコンクリート構造物を建設中で、今回事故を起こしたヘリは工事関係者用の物資を運んでいたと明らかにした。建設中の構造物は「射撃監視用のシェルター」とし、島での上陸訓練用だと説明している。
(塚崎昇平)