知念、九州王者にサヨナラ勝利 中部商業、総合力で制す<高校野球2021>4強決定①


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 第103回全国高校野球選手権沖縄大会第11日は14日、コザしんきんスタジアムなど2球場で準々決勝4試合を行い4強が出そろった。知念が春の九州王者・具志川商に5―4でサヨナラ勝ちし39年ぶり4度目、中部商は宮古に5―4で競り勝ち10年ぶり9度目の準決勝進出を決めた。準決勝は17日、沖縄セルラースタジアム那覇で行われ、第1試合(午前10時開始)が知念―中部商、第2試合は豊見城―沖縄尚学がぶつかる。決勝は18日午後1時から同スタジアムで行う。

宮古―中部商 3回1死二、三塁、中部商業の石川倫の適時打で生還し、雄叫びを上げる米田光希=14日、コザしんきんスタジアム(大城直也撮影)

◆中部商 総合力で制す

 初回に先制を許しながらも、得点圏での勝負強さが光った中部商が接戦を制した。先発の米須武瑠も最後までマウンドに立ち、宮古の追い上げを食い止めるなど攻守の総合力で勝利を引き寄せた。

 2点を追う三回、1死一塁。1番米田光希が二塁側に寄っていた遊撃の左を抜く安打を放つと、1走はヒットエンドランで三塁まで進んだ。続く2番石川倫は狙っていた直球にバットを合わせ、詰まりながらもしぶとく中前に落とした。走者2人が本塁にかえり、試合を振り出しに戻した。

 序盤に積極的に勝負を仕掛けたことで、試合の流れを引き寄せた。

 二回以降はスライダーを効果的に使った米須が凡打と三振の山を築く。ミスのない堅実な守りで徐々に自分たちのリズムに。同点で迎えた五回、死球で出塁した米田が盗塁で得点圏に進み、1打で勝ち越した。3点リードで迎えた八回に反撃に遭うも、米須は粘り強く投げ抜き1点差で逃げ切った。

 2打点の石川は「守りからリズムをつくり、変化球には手を出さず的を絞って後ろにつなぐ気持ちだった」と勝因を挙げた。準決勝に向け「いつでもチャレンジャー。闘志前面にやっていきたい」と決意を込めた。
 (謝花史哲)

二回以降苦しむ/宮古

 2点を先制した直後の守りを三者凡退で切り抜ける。初回に最高の立ち上がりを見せた宮古だったが、二回以降に苦しんだ。エース新里勇人は疲れで納得の投球ができず打ち込まれた。五回に勝ち越されて、八回に追い上げるなど意地を見せたが、1点が遠かった。来間陽斗主将は「(相手投手の)変化球の切れが良くて、二回以降は打ち切れなかった」と振り返る。斜めに落ちるスライダーを攻略できず、打開策を見いだせなかった。終盤に打線はスライダーを見極め始めたが、勝利をつかめなかった。

 来間主将は「(ベスト4に)届かなかったが、自分たちの野球を見せられた。後輩たちが越えてくれると思う」と、次の世代に後を託した。


◆知念サヨナラ勝利

具志川商業―知念 サヨナラ勝利でベンチから飛び出し、歓喜する知念ナイン=14日、タピックスタジアム名護(喜瀬守昭撮影)

 しぶとく、虎視眈々(たんたん)と待ち続けた勝機が、最終回に訪れた。知念は1点ビハインドで迎えた八回裏、相手の暴投で同点に追いつくとベンチ、スタンドから「きゃー」という歓声と拍手が湧き、ベンチは勢いを増した。

 九回裏、四死球と犠打で2死一、二塁の好機を迎えた。ここまで無安打の5番・與那覇幸輝が、フルカウントに追い込まれファウルで粘った7球目。狙い球の直球を二遊間へ力強くはじき返すと、打球は中前に転がった。

 早めのスタートを切っていた2走の國吉翔太が、本塁を目がけて全力疾走する。「ベンチから回れ、と声があってホームだけしか見ていなかった。必死だった」。右足からスライディングし逆転の生還を果たすと、跳びはね雄たけびを上げる知念の選手がグラウンドになだれ込んだ。「よっしゃー」。知念のベンチ、スタンドも総立ちでサヨナラ勝利に歓喜した。

 この日、八回から途中出場し、右前打で同点の足掛かりをつくった城間理希主将は「とにかく最後まで苦しかったが、あきらめない気持ちが逆転につながった。本当にうれしい」と涙を浮かべる。1球、1打、1点への執念が実った勝利に、喜びはひとしおだった。
 (上江洲真梨子)

九州王者敗れる/具志川商

 春の九州王者でさえ、夏の4強入りの壁は厚かった。具志川商は初回に2点を先制したが、二回途中から登板した相手エースに最後まで苦しめられた。喜舎場正太監督は「直球狙いでいったが、外角の変化球に惑わされた」。切れのあるスライダーを最後まで攻略できず、打線は5安打と沈黙した。

 加えて約2時間半に及ぶ激戦はナインの体力を奪った。終盤になるにつれ「足をつる選手もいて疲れも出ていた」(喜舎場監督)。足は重くなり、具志川商らしい“攻めるプレー”は鳴りを潜めた。九回裏、知念の最後の打者に中前へサヨナラの適時打を許すと、ナインはその場でぼうぜんと立ち尽くした。21世紀枠で出場した甲子園で白星をつかみ、春季九州大会の頂点に立った。春に誓ったことは「自力で甲子園に行く」。その夢を後輩に託し、長い夏を終えた。


宮 古
200 000 020│4
002 012 00×│5
中部商

(宮)新里―来間
(中)米須―平山
▽三塁打 来間、狩俣(以上宮)、平山(中)
▽二塁打 米田(中)

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具志川商
210 010 000 │4
002 010 011x│5
知 念

(具)田崎、山田、新川―比嘉
(知)伊佐、銘苅―石新
▽二塁打 比嘉(具)、糸数(知)