いかにシュートを打たせるか…ハンド女子の情報分析担当・嘉数陽介さん<五輪支える熱情>3


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中国との国際親善試合でチームに帯同した嘉数陽介さん=2016年6月(JHL/Yukihito TAGUCHI提供)

 6月23日に発表された東京五輪ハンドボールの女子日本代表。選手に加え、興南高出身の嘉数陽介さん(29)がチームの一員として紹介された。役職は情報分析スタッフ(アナリスト)だ。東海大学大学院卒業後に協会入りし日本代表を支えてきた。11大会ぶりの五輪出場に「ハンドボール界、選手、スタッフ、協会が持てる力を全て掛けて取り組んできた。メダルをみんなで取りにいきたい」と選手同様に気持ちを高めている。

 大学まで競技者だった嘉数さんがアナリストになったきっかけは、大学院のコーチング指導教員、栗山雅倫さんとの出会いにあった。栗山さんは当時女子代表監督で、師事を仰ぐうちにアナリストに興味を持ち始め、卒業後の2016年から協会で本格的に仕事として取り組むようになった。

 目まぐるしく攻守が入れ替わり、シュート成功率が大きく勝負を左右する。いかにフリーでシュートを打つか、そこまでの道筋をつくる戦術の遂行が勝利への鍵を握る。選手の体格や特徴も含め数値化し、その戦術的なパフォーマンスを分析するのがアナリストの役割。協会に入った当初はまだ日本ハンド界に根付いておらず、嘉数さんのような専任者が設置されたのはここ数年のことだという。

 主な仕事は、各国チームや選手の映像収集と分析、映像から整理した日本代表選手の課題や成果の振り返りなど。映像は局面ごとに編集して監督やコーチに落とし込みながら、チームの強化につなげている。

 女子日本代表には浦添市出身でデンマークのクラブチームに所属する池原綾香も選出された。コロナ禍で池原が代表に合流できない時期、嘉数さんはアプリを使ってチームの状態や課題の共有を図った。

 将来的な目標はコーチ業という嘉数さんは「縁とタイミングで今の仕事に就いた。ハンドに関われることを幸せに思う」と語る。五輪では「選手が気持ち良く自信を持ってプレーできるようサポートしていきたい」とデータに目を光らせ、対戦相手の攻略の糸口を見つけ出す。
 (謝花史哲)