日本から唯一の選出 けがや病気のデータ解析 スポーツドクター・島川朋享さん<五輪支える熱情>5


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東京五輪で選手のけがや病気を調べる研究チームに参加する島川朋享医師=14日、浦添市の同仁病院

 東京五輪を支える現場には、大会開催中に生じた選手のけがや病気に関するあらゆるデータを集めて解析し、再発防止につなげるスポーツドクターらがいる。その研究チームに日本から唯一選ばれたのが、同仁病院(浦添市)の整形外科医、島川朋享さん(39)だ。

 島川さんは東京生まれで、幼少からサッカーに熱中した。高校時代にインターハイでベスト8まで勝ち上がったが、すねのけがにも悩まされた。「けがの経験を生かしたい」。医学の道に進むと決め、東京医科大学を卒業後、浦添総合病院で研修医として勤務し、カタールやカナダ、福井県の病院などで経験を積み、この春沖縄に戻った。

 東京五輪の研究チームは、ノルウェーの医師を筆頭に8人で構成される。チームは五輪開催中、選手村や各地の医療拠点、各国のオリンピック委員会が報告するリポートから、けがと病気の情報を調べる。発生は試合中か練習中か、場所はどこか、ファウルがあったのか、どの程度の休みが必要になるのか―。あらゆるデータを解析する。

 約1万人の選手が対象で、毎回の五輪では1000~1300のけがと、600~800の病気が確認されるという。分析結果は「英国スポーツ医学ジャーナル」に掲載され、ルール変更や使用する道具の開発といった予防策に生かされる。島川さんは「やることはとにかく地味で地道な集計作業だが、確実にスポーツ医学の発展につながる」と強調する。

 スポーツのけがに関する調査は歴史が浅く、五輪では2004年のアテネ大会から導入された。日本でこの分野の研究は遅れているという。島川さんは「国際的な舞台での経験を、将来的に沖縄でのスポーツのけが予防にも生かしたい」と見据える。

 もともと、東京五輪の研究チームには島川さんの知人のスポーツドクターが参加予定だった。だが、19年に不慮の事故で亡くなり、大会関係者から島川さんに声が掛かった。亡き仲間の思いも胸に、五輪に臨む。

 (當山幸都)