勝連繁雄さんを悼む 沖縄芸能の方向示す大きな灯台 崎山律子


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新作組踊「平敷屋朝敏」について語る勝連繁雄さん=2013年6月、浦添市の国立劇場おきなわ

 私は長年、舞台公演の司会・案内役を務めた中で、勝連繁雄先生が書いた本も参考にしてきた。舞台を通していろんなことを教えていただき、激励を受けた。体調を悪くしていると聞き、心配していた。何かに取り組む時や大きな方向性を考える時、活動の根拠を示していただいた。大きな灯台みたいな人だった。これからもっと教えていただくところだった。打ちのめされている状態だ。まだ心の整理がついていない。

 勝連先生は、今の沖縄の芸能について「大きな希望を持ちながらも、検証しないといけない」とも話していた。例えば組踊や琉球舞踊が国の文化財に指定され、栄誉なことだが、そこが目標ではいけないと指摘していた。対ヤマトを向くのではなく、ウチナーンチュが足元の芸能について自覚し、高めていくことが大切だと話していた。

 「芸能を芸術やエンターテインメントとして届けることも大事だが、元々は琉球古典音楽の本当の素晴らしさは少人数で参加する座歌として広がった。そこで見せるのは、テクニックというよりも人生や歴史」とも指摘していた。

 勝連先生の詩集「風の神話」が大好きだ。詩人としての活動にとって、亡くなった弟で詩人の敏男さんの存在が大きかったと思う。弟の詩人としての才能を高く評価し、弟さんに問い掛けているように感じた。

 勝連先生が書いた小説「大主の国遊び物語」を舞台化することを先生と約束していた。生きている間に実現できず、悔しい。この小説は、ウチナーンチュであることを意識し、志情(しなさけ)の世界を大事にしている。

 先生と同じ時間を共有してきた仲間がたくさんいる。仲間たちと力を合わせ、勝連イズム継承をできればと思う。時間をかけて、舞台化を実現したい。
 (談、フリージャーナリスト、那覇市文化協会会長)