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子どもがトイレに行く前に必ず声を掛けておきたいこと<伊是名夏子 100センチの視界から>102


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
暑さでバテバテ、子どもたちもご機嫌ななめ

 トイレは時には危険なことが起こります。子ども二人を連れて外出し、トイレに行く時、私が車いすユーザーなので、みんなで車いす用トイレに入ることもあります。しかし、子どもそれぞれが男子トイレ、女子トイレに入ることも多くなってきました。また私がレジに並んでいる時や、カフェでお茶を飲み終わらないうちに、「トイレ!」と言われると、一人で行ってもらうこともあります。

 悲しいことに、トイレでは、男の子でも、女の子でも、性被害に遭うことがあります。性器をさわられたり、もしくは相手のを見せられ、さわらせられたり。個室で待ち伏せされたり、急に入ってこられることもあります。それなので普段からトイレで起こるかもしれないことについて子どもに話をしています。

 「一、トイレは時々悪い人がいる危ない場所。二、体や性器をさわられたり、いやなこと、怖いことがあったら、大きな声で『やめて!』『助けて!』と言い、逃げる。三、何かあったらすぐに話してほしい」

 悪いことをする人は「内緒だよ」と言うことがあるけれど、それは間違い。絶対にあなたは悪くないし、嫌なことする人が悪い。

 「四、友だちに話すのもいいけれど、大人が関わらないと解決できないことがある。自分のことでも、友だちのことでも、危ないことがあったら親や先生に話してほしい」と伝えています。子どもは急に「トイレ」と言い出すので、ゆっくり話すことはできませんが、毎回一言「危ないことが起こるかもしれないから、何かあったらすぐに教えてね」と声を掛けて行かせます。

 子どもは被害に遭った時、あまりのショックに「なんでもないことかもしれない」と思い込むようにしたり、「やめて!と言えなかった自分が悪いかもしれない」と自分を責めてしまうことがあります。また「友だちが誰にも言わないでと言っていたから、言えない」と大人に隠し、被害が深刻になることもあります。

 大人も、子どもから性被害の話をされた時、パニックになって、子どもを責めてしまうこともあるでしょう。地震が起こった時の避難訓練のように、事前に大人も学び、準備が大切です。怖い話は避けたくなりますが、子どもを守るため、まわりの人も誘って勉強してみませんか。そして子どもには、日常の会話の中で、味方になる大人は必ずいるし、被害に遭った時は100%相手が悪く、子ども自身は悪くないと、伝えていきましょう。


 いぜな・なつこ 1982年那覇市生まれ。コラムニスト。骨形成不全症のため車いすで生活しながら2人の子育てに奮闘中。現在は神奈川県在住。