開業55年…78歳の現役美容師「好きな道、幸せ」 伊江島で美を追求


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
数え90歳の具志川トシさんと会話を弾ませ、カット後の髪の毛をセットする喜屋武貞子さん(手前)=2日、伊江村川平のロン美容室

 【伊江】回転式のオレンジ色のイス、昔懐かしい戸棚、カジマヤー祝で贈られた風車が飾られている「ロン美容室」は、開業55年の老舗美容室だ。扉を開けると伊江村内最高齢の現役美容師、喜屋武貞子さん(78)がいつも変わらぬ笑顔で常連客を出迎える。カット、パーマ、毛染…ゆっくり、丁寧に仕上げていく。鏡に映る常連客の満面の笑顔にほほ笑み返す喜屋武さん。開業から半世紀以上の55年、「美」を提供し続けている。「自分の好きな道を選んでよかった。幸せ」と現役を更新中だ。

 伊江島で生まれ育った喜屋武さんは2歳の時に沖縄戦を体験した。伊江中学校卒業後、親戚が営む那覇の店で働いていたが美容師になる夢をかなえるため、17歳で東京の美容学校に入学。「青春。楽しかった」と目を輝かせる。美容師免許を取得し、23歳の時、故郷の伊江島でロン美容室を開業した。

 25歳で結婚。9年前に他界した夫と5人の子どもを育てた。4人目を出産した日もはさみを握った。体調に違和感を覚えながらもパーマやカット、接客をこなした。伊江港午後4時発のフェリーで出産のため本島に渡り、午後7時すぎに長男が誕生した。仕事と子育ての両立は大変だったと振り返るも「苦労を治す薬は『希望』」と明るく言い放つ。

 常連客は90歳を超える人も少なくない。最高齢者は来年カジマヤーを迎える。「5歳若くなったさあ~」と喜んでもらえることが原動力。目標とする人は、94歳まで現役美容師だった故吉行あぐりさん。次女が贈った吉行さんの著書「『あぐり美容室』とともに」を何度も読み返す。「この年齢まで仕事を続けてこられたのはお客さまや地域の皆さまに支えていただいたおかげ。元気をもらっている」と感謝の言葉を繰り返す。「美」の追求は進行形だ。
 (中川廣江通信員)