「恩返しがしたかった」宮本昌典、メダルへの執念届かず 最終試技で自己新狙うも失敗


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男子73キロ級 ジャークで188キロに成功した宮本昌典=東京国際フォーラム

 試合後の第一声は、震えた声で「悔しいです」。1カ月前にへんとう炎で体重が落ち、調整に苦心した。結果は自己ベストを10キロ下回るトータル335キロで7位。「お世話になった人に恩返しがしたかった」。ふがいなさで胸が詰まり、涙が止まらかった

 メダルに挑戦する気持ちは最後まで失わなかった。最終試技のジャーク3回目。3位を狙える196キロを申告。日本記録の自己ベストを6キロ上回る重量だ。一度プラットホームに向かいかけ、きびすを返した。「ここで英雄になるんだよっ」。恩師である平良真理コーチに両頬をはたいてもらい、気合を入れた。

 両手を左右に広げ、深呼吸を2回。右拳を握ってほえ、バーベルに向かう。一気に挙げようとしたが、前に落とし、力なく崩れた。正座した状態で両目をつぶり、天を仰いだ。「こういう舞台は重圧もかかる。そこに負けちゃったと思う」。反省の言葉が次々と口を突いた。それでも「メダルを目指しているという気持ちは伝え切れたと思う」と気丈に語った。

 まだ伸び盛りの24歳。自己ベストの345キロは今回の銅メダルに「試合強さを鍛えたい。大舞台でもしっかり勝負の試技を挙げられる選手になりたい」と奮い立つ。既に視線は3年後のパリ五輪へ。最後は泣きはらした顔で声を張り、くしゃっと笑った。「次はメダルをかけて戻ってきます」
 (長嶺真輝)