日本全土の沿岸海域を1キロメートル区画に分割し、生物種数などのデータから生物の絶滅リスクを最小化する「保全優先度」を計算すると、上位10カ所のうち9カ所は沖縄県内の沿岸で、辺野古は2万5750区画のうち4位だった。辺野古は日本の海の生物多様性を存続させるために代替不可能な保全重要地域だ。
海の生物多様性に関する調査研究は、埋め立て計画が表面化した1997年より後の2000年代に急激に進み、現在も進行中だ。計画時に比べてこの海の多様性の評価は増大し、今後も高くなると予想される。00年代に行われた環境アセスメントも、科学的な情報が不十分なため不正確な評価しかできなかった。
サンゴ移植は、サンゴ礁の消失を抑止する方法の一つだが、技術的に確立されたとは言いがたく、移植したサンゴが死滅する可能性も高い。移植以外に、別のサンゴ礁を保全することで失われた多様性を補償する手法もあるが、十分に検討されていない。
現在、世界中で生物多様性を守るための戦略が立てられ、この埋め立てが計画された1997年とは社会情勢も大きく変化している。この埋め立てによるサンゴ礁生態系の損失は、現在の国際的・国内的な取り組みとは逆行している。
サンゴ移植など細部の議論に陥ってしまい、世界的な問題であるサンゴ礁生物多様性の劣化をどう防ぐのか、といった大局的で科学的な議論が十分になされていないのが深刻な問題だ。
(生物多様性保全学)