【識者談話】沖縄振興「基地維持装置」から脱却を 前泊博盛沖国大教授


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前泊博盛沖国大教授

 自民党政権にとって沖縄振興とは「安保・基地維持装置」に他ならない。自民党政権が描く沖縄振興は、沖縄の自立的経済発展が基地撤去要求の力を持たぬよう「基地と財政に依存する依存経済」を宿命づけようとしている。

 だからこそ、自民党は沖縄の日本復帰時の50年前に自ら掲げた「本土との格差是正」「自立経済」の目標は未達成のまま、さらなる安保・基地維持装置の延長となる新たな沖縄振興を必要としている。

 提言案は全国平均の7割程度の県民所得、子どもの貧困、全国最低の大学進学率、高離職率、高い非正規雇用率から来る労働生産性の低さなど「全国ワースト」の多さを指摘した。

 入域観光客1千万人時代を迎え「景気もよく売り上げは上がっていた。しかし、県民の手元にいくらの財が残ったのだろうか」と、投下資本の本土還流という「ザル経済」の本質も突いている。だが、肝心の「地元歩留まり率」を高め、課題克服を図る具体的な目玉政策や数値目標が見当たらない。

 沖縄の発展の阻害要因となっている基地と、跡地利用について「広大な基地による土地利用などの制約への対応は引き続き国の責務」としながら基地返還策の言及はない。次代の新観光資源に「ブルーツーリズム」「海洋環境維持などの取組」を掲げながら、海を埋め立てる辺野古新基地建設、那覇軍港移設にも触れないなど「現実と提言案の矛盾」を無視している。

 復帰から50年。ポスト香港をにらむアジア金融センター構想や復帰時につぶした外資企業の再誘致策など、骨太の政策で「安保・基地維持装置」から本来の「沖縄振興発展装置」への転換が必要だ。
 (基地経済論)