身がぷりぷり!鮮度抜群の糸満産キンメダイ 20代の姉妹がブランド化


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 【糸満】糸満市糸満の関屋安莉さん(23)と妹の春花さん(20)は今年1月に、魚介類などの卸販売を手掛ける「Noah’s Ark」を設立した。沖縄近海のキンメダイを独自の手法で鮮度を保ち「糸満産金目鯛 かりゆしキンメ」として県内外に販売している。キンメダイのブランド化で、量から質の漁業へ転換していきたいと考えている。

「糸満産かりゆしキンメ」を販売するNoah’s Ark代表の関屋安莉さん(右)と取締役の関屋春花さん(左)=5月27日、糸満市糸満の食工房まほろば

 かりゆしキンメは、県内のすし職人や料理人から「鮮度では県外に負けない」「身がぷりっとして、刺身でもおいしい。焼いてもふわふわだ」など、好評という。

 鮮度の秘密は「船の上の電気屋さん」として県内各地の漁師から慕われる父・洋一さん(53)と、第八新漁丸船長の新垣哲二さん(59)さんが約8年前に開発した特殊装置にある。漁槽に冷えた海水を取り入れる際、微粒子化した窒素ガスを溶け込ませるもの。魚の体に残った酸素が窒素と結合し、腐敗の進行を抑制する。

 現在は、質の良い魚でも水揚げ量が多いと魚価が下がってしまう。8月以降、県の補助を受けて琉球大学農学部と研究を進め、将来的には鮮度や大きさ、脂肪率などで等級を分け、漁価の安定化を図る。少ない漁獲量でも漁師が生計を立てられるため、乱獲を防ぎ、持続可能な漁業につなげたいと考えている。

水揚げされたばかりの糸満産かりゆしキンメ=5月28日、糸満市西崎の県水産公社地方卸売市場

 「かりゆしキンメ」という名称は、新垣船長が名付けた。「かりゆし」には「嘉利が寄しーみる(良いことが寄ってくる)」と、軽石が沈まないように「船も沈まない」という意味を込めた。関屋姉妹とともに、船の設備や品質管理も含めて、かりゆしキンメ漁を広めたいと考えている。

 昨年4月、新型コロナウイルス感染拡大の影響で飲食店の休業が続いた際、関屋姉妹は「魚が売れない」と悩む漁師たちの姿を目の当たりにした。取引先がいなくなったことで魚価が急落し、現状を変えたいと思うようになった。

 「第一次産業は生活の基盤だ。第一次産業があるから、第二、第三次産業の仕事もある」と安莉さん。「第一次生産者の思いが育んだ商品を最後まで一緒にPRしたい」という思いから、農家とも連携していきたいと考えている。

 市糸満の食工房まほろばでは、かりゆしキンメの魚汁や煮付け定食を提供している。水揚げ日には刺し身定食を1500円で販売している。インスタグラム(@noah_wavyyy)では、しゃぶしゃぶセット2~3人前を4500円で販売している。

(比嘉璃子)