コロナ禍で世界の構造が大きく変化しつつある。筆者が見るところ、その変化は二つの面で顕著に見られる。
第1は、グローバリゼーションに歯止めがかかった、各国の国家機能が強化されていることだ。国家機能でも行政権が、司法権、立法権に対して優位に立つようになっている。一部の政治学者が「大統領化」と名付ける現象が議院内閣制の国でも進んでいる。
第2は、格差の拡大だ。しかも格差が重層的に拡大している。国家間の格差がある。コロナ対策でも「持てる国」は国民にワクチン接種を保障することができるが、「持てない国」はそれができない。
一国内の地域間の格差も深刻だ。沖縄のように観光への依存度が高い地域は、コロナ禍によって受ける経済的打撃が格段に大きい。階級間、階層間の格差も拡大している。特に非正規労働者は、雇い止めなどで生活困難に陥っている。それにジェンダー間の格差も加わる。非正規の女性で、子育てをしている人は、コロナ禍による打撃を強く受けている。格差を是正するのは、国と地方自治体の責務だ。
沖縄人にとって、沖縄県は、地方自治体ではない。県民だけでなく、日本と全世界に在住する沖縄人の「祖国」だ。県は「半国家」である自覚を持って、コロナ対策、格差是正に取り組んでほしい。財源が足りなければ、基金を作って日本と世界の沖縄人に協力を訴えればよい。コロナ禍はまだまだ続く。その過程で沖縄人のアイデンティティーを強化する政策を取ってほしい。
さらに国際情勢が激変している。米国、中国、ロシアだけでなく、英国、ドイツ、トルコ、イランなども国家エゴを強め、自国の権益を露骨に極大化しようとしている。帝国主義的な再編が起きている。米国が自由と民主主義を強調するのは、帝国主義国である米国の権益を拡張するのにそれが都合がいいからだ。中国やロシアが国家主権を強調するのも、両国の帝国主義政策に米国やヨーロッパ諸国が干渉するのを防ぐためだ。
このような帝国主義ゲームに沖縄は翻弄(ほんろう)されないようにする必要がある。そのために重要なことが二つあると思う。沖縄と日本の中央政府との関係や、沖縄の安全保障に密接な関係を持つ米国や中国の情勢だけでなく、世界に目を向けることだ。特にイスラエル、サウジアラビア、イラン、アフガニスタンなど米国にとってウエイトが高い国の情勢の変化が沖縄にどのような影響を与えるかを分析することだ。
その上で、沖縄と沖縄人がどうすれば生き残ることができるかについて、真剣に考え、戦略を練ることだ。それらの作業は沖縄人自身の手で行うことが重要だ。沖縄の政治の最大の問題は、政党が東京の動向を気にしすぎることだ。保守であれ、革新であれ、○○党沖縄県支部という発想を捨て、沖縄○○党として考え、行動することが重要だ。そこから沖縄の独自外交の基盤が生まれる。
(作家・元外務省主任分析官)