被害回復が喫緊の課題 ハンセン病啓発、将来構想に協力を 宮古南静園が市に要請 


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座喜味一幸市長(左から2人目)と大城裕子教育長(右端)に要請文を手渡したハンセン病元患者の知念正勝さん(左から3人目)ら=12日午前、宮古島市役所

 【宮古島】国立療養所「宮古南静園」入所者自治会と宮古退所者の会は12日、ハンセン病問題啓発推進と同園の将来構想策定への協力を宮古島市に要請した。自治会と退所者の会代表の知念正勝さん(87)は、元患者の高齢化が進んでいることを指摘し「被害回復は喫緊の課題だ」として、問題解決の推進を強く求めた。

 南静園は1931年の開園から今年で90年になった。同園自治会によると、今月1日現在の入所者は48人、平均年齢は89歳を超えた。自治会も入所者だけでは維持できず、退所者も参加して運営するなど高齢化が進んでいる。

 かつてハンセン病患者らを強制隔離していた国立療養所は南静園と愛楽園(名護市)を含め全国に13カ所あり、高齢化は全国的に進む。入所者の生活、医療を守る体制や施設、資料を保存し、ハンセン病の歴史や問題を後世に伝える体制づくりなどを求める将来構想を各園が構築し、国に実現を求めてきた。

 南静園自治会は2009年、市の協力も得ながら厚労省に将来構想を提出したが、12年が経過しても策定に至っていない。

 国は20年度になって厚労省に「国立ハンセン病療養所将来構想実現室」を設置した。これを受けて今年6月、南静園自治会は園の歴史的建造物としての保存、元患者らが眠る納骨堂の永久的な管理体制確立などを求める将来構想を再度、提出した。

 12日の要請で知念さんは、かつて国が推し進めた「無らい県運動」を挙げて「官民一体で患者を見つけて通報した。あの大変な運動を推進した力を今度は解決に向けて注ぐべきだ。ぜひ協力してほしい」と求めた。

 新型コロナウイルス渦中にあり園内の資料館が休館になったり、当事者の語り部活動ができなくなったりしているとして「ハンセン病とコロナ禍での人権問題は重なる課題もある。たゆまぬ啓発が必要だ」と強調し、学校現場での教育の重要性も訴えた。

 要請を受けた座喜味一幸市長は「一人の市民として差別、偏見があったことを大変申し訳なく思う」と謝罪した。その上で「皆さんに寄り添い、市としてしっかりと将来構想策定に向けて取り組む」と誓った。