自民党が、来年で日本復帰50年を迎える沖縄の新たな振興計画についての提言を正式決定した。沖縄振興調査会(小渕優子会長)が策定した提言は7月下旬までに骨子案がつくられ、8月3日の決定に至るまで修正が繰り返された。沖縄振興を「総合的な安全保障」と位置付ける姿勢は堅持する一方で、県民所得の低迷を指摘したり、現行制度の単純延長を否定したりする部分は削られた。提言策定の過程には、自民党内の思惑も見え隠れする。
提言は、骨子案をベースに、少なくとも2度の変更が加えられた。
7月28日に示された案は、新たな沖縄振興特別措置法の期限を「法的措置を講ずる期間は10年としつつ」としたが、提言は「適切な期間」と明言を避けた。
また、5次にわたる振計を振り返る部分は、当初案にあった「県民の手元にいくらの財が残ったのだろうか」と従来の振興策の効果を疑問視する踏み込んだ表現が消えた。現行制度の単純延長は「沖縄が抱える課題を悪化させる」と評した部分も差し替えた。
その一方で、沖縄振興を「総合的な安全保障としてアジア・太平洋地域の安定に資する」と意義付けた部分は一貫した。
骨子案にはなかった「尖閣諸島」の文言を盛り込んだのも、米国と対立する中国と近接する沖縄の地理的条件を強く意識した上での対応とみられる。
28日の調査会では、出席議員が「政争の具にするつもりはないが」と前置きした上で、「来年には県知事選がある。その点も考慮してほしい」という趣旨の発言もあった。提言の変遷は、党の支持層である経済界の反発を避けるなど、選挙を控えた思惑も透けて見える。
(安里洋輔)