【記者解説】辺野古サンゴ移植許可、県の撤回の緊急性が焦点に 県が提出した意見書のポイント


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辺野古新基地建設現場

 沖縄防衛局による県のサンゴ移植許可撤回の執行停止申し立てに対し、県が農相に提出した意見書は、水産資源や環境保護の観点を強調した内容になった。執行停止が認められれば、高水温や台風などの影響でサンゴの生残率が低下する夏季の移植作業再開につながり、環境と水産資源に大きな打撃を与える。

 県の意見書では、サンゴが水産生物の生産や水質浄化に資する点などを説明し、一度損壊した場合に再生が不可能な点を強調している。移植時期について、水温が上がる時期や台風の襲来が多い点などから「条件などの通り、秋季の移植のため期間延長を検討すべきだった」とする。

 執行停止を経て、沖縄防衛局が夏季に移植を強行する場合、移植先での生残率が下がるのは必至だ。サンゴに集まる魚類などの水産資源にも影響を及ぼす。

 沖縄防衛局が取った審査請求には問題がある。防衛局は県の撤回通知で、審査請求利用が明示されたことを挙げて「法制度に沿った対応」と強調するが、審査請求は不利益を被った「私人」の救済が本来の目的で、政府機関の利用には批判が根強い。

 水産庁は県と防衛局の主張を踏まえ、許可撤回の効果を止める緊急性があるかどうかを判断する。辺野古新基地建設は埋め立て予定海域の軟弱地盤の存在などで、大浦湾側の埋め立て工事には見通しが立たずにいる。その工事に伴うサンゴ移植にどの程度の緊急性があるか、水産庁は厳正に審査する必要がある。
 (塚崎昇平)