名護市辺野古の新基地建設に伴うサンゴ移植許可撤回を巡り、野上浩太郎農相は5日、「県の撤回は沖縄防衛局の法的地位を侵害する」などとして、撤回効力を一時的に停止する執行停止を認めた。県の移植許可が復活したことになり、台風接近に伴う気象条件の悪化で具体的な時期は不透明だが、沖縄防衛局は6日以降、移植作業を再開するとみられる。県は今後、沖縄防衛局に行政指導などで作業しないよう求めるほか、抗告訴訟なども視野に対抗策の検討に入った。
県は7月30日、サンゴ移植の許可を出す際に付した条件を沖縄防衛局が守っていないとして、移植の許可を撤回。県の許可撤回を不服とする沖縄防衛局が2日、執行停止を農相に申し立てていた。これに対して、県は4日、撤回の正当性を主張する意見書を水産庁に提出していた。県幹部は「何を審査したのか。あまりにもひどい。三権分立や地方自治がゆがめられている」と反発した。
一方、同庁担当者は本紙取材に「県が主張した『公共の福祉』は重大な影響を及ぼす恐れがあるとまでは認められない」と説明した。「行政不服審査法の規定にも基づいて適切に判断した」と強調した。
防衛省担当者は5日「漁業法を所管する農水省で、法令に従った判断をいただいた」と話した。移植に着手できる状況はあるとしつつ、作業当日の現場状況を踏まえ、6日以降の移植実施の是非を判断する。
県水産課は「内容を確認して対応を検討する」とした。県は移植許可で台風期や高水温期などの移植回避を求めており、沖縄防衛局に条件を順守して早期移植再開を避けるよう求める行政指導などを出すとみられる。沖縄防衛局は2日、農相に県の許可撤回の妥当性を問う審査請求を申し立てており、執行停止はその裁決までの一時的な措置。県は6日、審査請求に対しても撤回の正当性を主張する答弁書を水産庁に提出する。