名護市辺野古の新基地建設に伴うサンゴ移植許可撤回を巡り、農相が撤回効力を凍結する執行停止を決めた。県が4日に意見書を提出してから丸1日も経過していない中、同じ政府内という身内同士の手続きで県の撤回処分を覆した格好だ。県幹部は「結論ありきだ」と反発を強めた。工事を再開すれば数日で一部地区の移植が完了する恐れもあり、県は対抗策の検討作業を急ぐ。
執行停止の手続きに関し、県が主張をまとめた意見書を農相に提出したのは4日午後8時ごろ。翌5日午後6時20分ごろに水産庁職員から県水産課に電話で連絡が入った。県は早期決定も想定していたが、県関係者は「それにしても早すぎる」とため息を漏らし「台風が近づく中、よく恥ずかしげもなく認めたものだ」と批判した。
農水相は県に求めた意見書提出を翌日の締め切りとするなど早期決定に向けて動いていた。背景には、県の許可撤回に対して、政府内の強い反発がある。防衛省幹部は「こっちも強引にいくしかない」と不快感をにじませた。
防衛省側は、サンゴ移植を許可するよう求めた最高裁判決を後ろ盾に正当性を主張する。同省幹部は「移植許可を求めた判決は大きい。法治国家として従うべきだ」と強調した。
これに対し、県関係者は「7月28日にいったん許可した時点で最高裁判決に対する県の義務は果たしている」と反論する。
県側は対抗策の検討を進める。ただ、最初に着手した地区のサンゴは約830群体で開始から約7日で作業が終わる計画だ。防衛局は船が出せればすぐにでも再開したい考えで、県が対抗措置で作業を止める前にこの地区の作業が完了する恐れもある。
県は訴訟のほか、軟弱地盤の改良に関する設計変更の不承認を急いで、工事の完成が見通せない状況をつくることも検討する。一方で「本丸である不承認の根拠付けを、おろそかにしてはいけない」との慎重な意見もある。
県幹部は「県としては県民に誠実な政治を続ける。できないなら公約違反と言われても仕方ない」と表情を引き締めた。
(明真南斗、知念征尚)