「よし」涙浮かべ歓喜 家族、誇りかみしめ 喜友名金メダル 快挙 県民一つに


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
喜友名諒選手の沖縄県勢初の五輪金メダル獲得に歓喜する家族ら =6日午後8時40分、沖縄市(代表撮影)

 鍛錬に鍛錬を重ね、自らの形を究めてきた喜友名諒選手(31)=沖縄市出身=が空手発祥の地、沖縄の歴史に新たな一ページを刻んだ。「感動した」「沖縄の誇り」。支えてきた家族や友人、共に歩んできた空手仲間、そしてテレビ越しに声援を送った多くのウチナーンチュは、見えない敵と闘う喜友名選手の姿に自らを重ね、汗を握り、涙し、喜んだ。沖縄に初の金メダルをもたらした快挙はコロナ禍にあえぐ県民を一つにした。

 沖縄市にある喜友名諒選手の実家で6日夜、父の勇さん(59)、妻の絵理さん(30)、息子の冴空さん(3)妹の泉希さん(26)ら家族が試合の中継を見守った。数々のトロフィーが並ぶ家で、金メダル獲得が決まった瞬間、家族は涙を浮かべて「よし、よし」と声を出し、喜びをかみしめていた。

 幼稚園で空手を始めた喜友名選手。勇さんは「本人から空手がしたいと言ってきた。『好きこそものの上手なれ』だよね」。五輪前の会話では「今の自分があるのは周囲の人たちのおかげ。感謝を忘れずに平常心で」と送り出した勇さん。金メダル獲得に「積み重ねの成果だ。父として誇らしい」と喜友名選手の努力をたたえた。

 喜友名選手の母紀江さんは、空手に打ち込むために興南高校に進学した息子を毎日、沖縄市の自宅から送迎した。恩納村の道場にも送り鍛錬を支えてきたが、病気のため2019年に57歳の若さで亡くなった。

 6日の演武後、言葉を詰まらせて母への感謝を口にした喜友名選手。五輪の金メダル獲得を強く願っていたという紀江さんに、その姿を直接見せることはできなかったが、表彰式では紀江さんの遺影と共に表彰台に上がった。

 勇さんは「金メダルを母親に報告できて良かった」と話した。冴空さんは空手着を着けて父親の勇姿を見守った。妻の絵理さんは「努力している姿を隣で見てきた。普段は家族を第一に考えてくれる人。かっこよかった」と涙を流した。