スポーツ
東京五輪2020・沖縄関係選手特集

決勝演舞は「オーハンダイ」 金に挑んだ喜友名が込めた思い

男子形で獲得した金メダルを手にする喜友名諒=日本武道館

 「ゴールドメダリスト」の称号とともに、初代王者の名がアナウンスされた。喜友名諒が表彰台の中央に上り、県勢初の金メダルを首に掛けた。右手には、2年前に亡くなった母紀江さんの遺影が。「しっかり金メダルを取る約束を守ったよ。安心していいよ」。遺影の紀江さんが胸に輝く勲章のそばで優しくほほ笑んでいた。

 「オーハンダイ!」。決勝の演武。静寂に包まれた日本武道の殿堂に、気合十分の掛け声がこだました。空気がぴんっと張り詰める。「いつも仲間と競い合ってるイメージが浮かんできた。心強い気持ちで、決勝の舞台に立てた」。眉間に力を込め、殺気を宿した喜友名の大きな瞳が、仮想の敵を捉えた。

 ゆったりとした所作で斜(はす)に構える。一転、技を繰り出すと同時に相手を威圧する気合を発し、素早い足さばきから劉衛流の特徴である「一足二拳」の間合いで突きや蹴りを連発。技の風切り音、胴着の擦れる音、深い呼吸。堂々たる演武が会場の空気を支配していく。最後の一礼まで隙のない動きと表情に、王者の風格が漂った。

 主審の手が喜友名に上がり優勝が決まったが、相手への敬意から表情は崩さない。ダミアン・キンテロ(スペイン)は何度も決勝で相まみえた相手。「ダミアン選手への感謝の気持ち」が湧いてきたという。畳の中央に正座し、正面に一礼して天を仰いだ。最後まで礼を尽くし、王者にふさわしい姿を貫いた。試合後も引き締まった表情だったが、メダリスト同士の写真撮影でようやく柔らかい表情になった。

 発祥の地沖縄で生まれ、出合った空手で鍛え上げてきた演武をスポーツの最大の祭典で存分に打ちきり「沖縄の伝統が世界に広がり、沖縄、日本、世界で空手が愛されていることを伝えることができた」とうなずく。5歳で競技を始め、中学3年で劉衛流の門をたたいてからは一日も稽古を欠かしたことはない。沖縄の子どもたちにも「大きな目標を持って自分の道に進んでほしい」と誇らしげに語る。

 沖縄の歴史を画する偉業だが、喜友名にとっては一つの通過点でしかないだろう。技に込められた意味を探究し、究めることが武道の本質にあるからだ。「一生鍛錬して、究めていけるように精進したい」。空手の神髄を突き詰める求道者の歩みに、終わりはない。
 (長嶺真輝)



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