【深掘り】辺野古サンゴ移植再開 国が独自解釈で強行 「台風」「水温」沖縄県条件を逸脱


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潜水作業を行う作業船=6日午後5時ごろ、名護市辺野古沖(沖縄ドローンプロジェクト提供)

 名護市辺野古新基地建設に伴い沖縄防衛局が実施するサンゴ移植について、防衛局はその都度の水温の状況などから移植は可能という独自の解釈を持ち出して、県の許可条件から逸脱する高水温期・台風襲来期の移植に突き進んでいる。県の許可撤回が農林水産相によって執行停止となった直後の6日も、沖縄周辺を台風が進む中で、沖縄防衛局は移植作業の再開を強行した。県は台風や水温がサンゴに及ぼす影響を示し、移植許可を撤回した正当性を改めて主張していく。

■「30度で白化」

 サンゴ類は一般に水温が30度を超えると白化が進みやすいとされる。県は移植許可に当たり、「台風や高水温の影響などでサンゴの生残率が下がる」として夏場の現在は移植を回避するよう条件を付けている。

 これに対し沖縄防衛局は、高水温の移植判断基準として、沖縄周辺の最暖月(8月)平均海水温にあたる28・92度以上と定めた。最初に移植を開始した7月29、30日はいずれも「この水温を下回っていた」として、埋め立て海域からサンゴを採捕し、別の海域への移し替えを実施することを判断した。

 県は農相に提出した意見書で、沖縄気象台のデータから沖縄周辺で海水温が最も高くなるのは8月20日ごろとした上で、「移植時点で水温が下回っても、1週間後に28・92度以上になることはあり得る。移植と高水温のストレスを受けたサンゴの生残率は低下する恐れがある」と指摘。水産資源保護の観点から、防衛局の判断には問題があると追及する。

 

■移植サンゴの行方

 県は移植時期決定に当たり台風襲来期の8、9月を考慮することも求める。サンゴは移植先に定着するまで早い種でも1カ月程度がかかる。過去には台風や波浪で移植直後のサンゴが流された例もあった。

 7月末に防衛局が移植したサンゴについて、県は「移植後直ちに活着するわけではなく、台風接近と波浪の影響で生残率が下がる恐れがある」と指摘する。

 沖縄防衛局は移植前日と当日、気象庁のホームページで台風や波浪の状況を確認したとしている。移植の開始後、8月に入って沖縄周辺で台風や熱帯低気圧の発生が相次いでいるが、小野功雄局長は4日に「(作業時に)台風に関する情報はなかった」と釈明した。

 これに対し、玉城デニー知事は6日の記者会見で「台風接近で、既に移植したサンゴに被害が出ていないか心配だ」と指摘した。

 県は移植許可条件として、移植後のサンゴのモニタリング調査と報告を求めていた。モニタリング調査について、沖縄防衛局は6日「県に報告する考え」と答えた。一方で、琉球新報は、移植が完了したサンゴの数や、高水温期の作業基準作成の経緯、作業実施の根拠などを防衛局に質問したが、「審査請求中」として回答しなかった。
 

(塚崎昇平)