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マジョリティは言われない「どうして?」<伊是名夏子 100センチの視界から>103


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
キャンプに行きました。自然の中で遊び、おいしいものを食べ最高でした

 「どうして近くにある小学校に通いたいの?」「なんで一人でコンビニに行きたいの?」「どうして電車に乗りたいの?」「なぜ結婚したいの?子どもがほしいの?」障害があると何をするのも説明を求められることが多いです。障害のない人に対してなら聞かないと思うのですが。やりたいことをやりたい、と言うだけで驚かれ、「どうして?」と聞かれることが時には嫌になります。

 だって相手の理解と許可が必要な感じがするからです。「障害のある人はできなくて当然」「やりたいことを諦めることがあっても仕方ない」と思われているのでしょう。もちろん、私のことを理解したいと思って、悪気なく聞いてくるのかもしれませんが。

 先日、とある雑誌にコラムの寄稿をすることになり、子ども二人と私の三人が、車いすに一緒に乗って散歩に行く話を書きました。すると編集者が電動車椅子協会と警察に問いあわせ「車いすの三人乗りは法律違反ではないけれど、危ないので注意喚起している」と回答され、公道での車いすの三人乗りの描写は省きたいと言われたのです。車いすの私はベビーカーも抱っこひもも使えず、急に雨が降ったからと言ってタクシーに乗ることもできません。制限された生活の中で、工夫を重ねています。

 また私はけがをしたら重症化しやすく、子どもが救急車で運ばれるとき、一緒に乗れるか分からないので、安全面には考慮をしているつもりです。体重も三人合わせて60キログラム程度で大人一人分、ベルトも付けられます。考え抜いて車いすで子育てをしているのにも関わらず、簡単に危ない、と言われるのが本当に悲しいです。

 多くの親がしているように、抱っこひもで子どもをおぶったまま自転車に乗ることは法律違反です。自転車で公園内を走ってはいけません。片手でベビーカーを押し、片手で子どもの手を引くのは危なくはないのでしょうか?肩車はどうでしょう?マジョリティがやることは見慣れているので、危険や違反なことも見過ごされがちですが、車いすだと簡単に危ないと言われ、反対されます。

 車いすで子育てすることも、障害のある子が近くの小学校に通うことも、車いすで電車に乗ることも当たり前になってほしいです。発信を続けることの大切さを改めて感じます。そして車いすの生活を理解し、応援してくれ、対等に支え合える仲間が増えるとうれしいです。


 いぜな・なつこ 1982年那覇市生まれ。コラムニスト。骨形成不全症のため車いすで生活しながら2人の子育てに奮闘中。現在は神奈川県在住。