【識者談話】夏場のサンゴ移植「環境保全」困難 中野義勝氏(日本サンゴ礁学会保全担当理事)


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水中ボンドでサンゴを固定する作業員=10日午後1時2分、名護市の辺野古沖

 沖縄のサンゴ礁は生物多様性の宝庫だが、直接間接の人間活動によりサンゴ礁生態系の破壊と疲弊は深刻で、健全な状態で次世代に残すための保全は急務だ。

 造礁サンゴの移植について、日本サンゴ礁学会はガイドラインを作り、サンゴ群落の回復には好ましい生育環境条件の保全こそ最も大切だと位置付けている。移植はサンゴ群集の再生を助ける手段であり、移植の細かな技術によって結果には大きな差が出る。

 事前に移植先の環境要因や移植する種について慎重に調査検討し、移植後にも管理を徹底しなければ高い生存率は望めないことも先行事業から明らかである。現在のサンゴ移植は、多様性を取り戻す本来の意味での「自然再生」ができるほど成熟しておらず、生息地を失う埋め立てのようなかく乱に対しては、災害時に何とか命を永らえる救急救命措置のような段階だ。

 一方、今回の移植は、県だけでなく、防衛局自らが設置した専門家による環境監視等委員会でも避けるよう指摘された夏場の移植が行われた。科学的合理性に疑義を感じる。これではよりよい結果を放棄し「環境保全措置」という目的も成就できないのではないか。