【記者解説】サンゴ移植、監視委は政府追認機関に 「白化の恐れ」認めていたのに


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真っ青な大浦湾に浮かぶ辺野古新基地建設のための作業船=7月30日、名護市

 沖縄防衛局がサンゴ移植を始めた後で、高水温期の移植実施について自らが設置した環境監視等委員会に初めて判断基準を提示したのは、委員会から防衛局の判断に異論は出ないと分かっているからだ。目的は環境への配慮や保全ではなく、結論ありきで「専門家」と呼ばれる人たちのお墨付きを得ることだ。環境監視等委員会が事実上、防衛局の追認機関となっていることを示している。

 環境監視等委員会は当初から、「軍事基地を造ることありき」と批判して辞職する委員が出るなど内部からも疑義が示されてきた。それでも実行に移す前に委員会に報告するのが通例だった。

 防衛局は今回、県の許可を得るより前に、環境監視等委員会の中でサンゴを専門とする委員や委員長に了承を得ていたと正当性を主張する。それなら個別の相談でよく、委員会の形を取る必要はない。

 現在防衛局が移植を進める地区は約7日間で作業が完了する計画だった。県による移植許可の撤回で作業が止まった期間がなければ、委員会に諮る前に一部地区の作業が完了していた可能性もある。だが、10日の委員会で、判断基準が事後報告だったことについて、委員会から意見は上がらなかったという。

 そもそも県は夏場を避ける条件で許可を出した。防衛局も高水温による白化の恐れを認めていたはずだった。最低限にとどめなければならないサンゴ類の移植について、環境監視等委員会が政府と一緒になってそのハードルを下げたことになる。環境保全よりも工程を優先する政府の姿勢にお墨付きを与え、助長している。
 (明真南斗)