「ゲノム解析なく感染源確定」県の疫学的推論、医師や調査団体が疑問視


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 県内外の医師や調査団体は意見書で、県疫学統計・解析委員会の不適切なデータ解釈の例として、学校PCR検査の実績に関する分析を挙げた。疫学統計・解析委員会は7月17~23日に児童・生徒1303人に検査したが陽性者は5人だったことから、「小児の多くが家庭内感染」と分析。意見書は「系統的全ゲノム分析をしなければ家庭内感染由来かどうかは確定できない。飛躍した解釈だ」と指摘している。

 委員を務める県立中部病院の高山義浩医師は本紙の取材に「(学校PCR検査の結果は)少数にとどまっている。これは、集団感染が生じている高齢者施設、特にデイサービスの結果とは大きく異なる。教室内もリスクとなりうるが、家庭内での感染が主であると考えられる」と述べた。

 疫学統計・解析委員会は「陽性者への積極的疫学調査の徹底」や「求められる施策」などを提言しており、意見書は「政策を提示することは、データの分析や解析とは別の専門性や能力が求められる」として、役割の線引きを明確にすべきだと指摘した。

 また、疫学統計・解析委員会は運転代行の営業自粛も提示している。意見書は「代行運転が感染拡大の要因であることの科学的エビデンス(根拠)はどのようにして得られたのか。そもそも感染経路は飲食店のみではない」と指摘し「公文書として不適切だ」と指摘している。一業種の状況を左右する事態にもつながり、「不備の分析」と批判した。

 高山医師は「新興感染症の対策では、エビデンスの確立を待っていては間に合わない。飲食店の時短営業や酒類提供の停止、休校措置など先手を打って判断してきた。大切なことは、その効果をのちに検証することだ」と説明した。