【東京】米軍が普天間飛行場内で保管する有機フッ素化合物(PFAS=ピーファス)を含む汚染水を処理して基地外の公共用下水道に放出する計画に、政府内で否定的な姿勢が強まっている。放出に反対する地元の意向に加え、そもそも下水道への放出自体が想定されておらず基準がないことが課題だ。公的組織の米軍に放出を認めれば、廃棄物として処理してきた事業者に対しても「悪い模範」となる懸念があるためだ。米軍基地問題の枠を超え、日本の環境行政を左右する問題となっている。
普天間飛行場からの放出計画について米軍は7月8日に報道発表し、処理した上で放出したい考えを示した。処理水の汚染物質の濃度はPFOS、PFOA合わせて1リットル当たり50ナノグラム以下と定めた「日本の飲料水基準に完全に準拠している」と安全性を強調した。
だが、国内ではPFOS、PFOAは化学物質審査法に基づき、新たな製造や輸入、使用が禁じられる第1種特定化学物質に指定される。もともと自然界に存在しない物質で、分解されにくく、環境中に長期間残ることが特徴だ。処理により1リットル当たりの濃度を下げたとしても、放出量が多ければ結果的に大量の物質が環境中に蓄積することになる。政府関係者は「放出を認めた場合の影響が大きい」と指摘する。
これまでも環境省や消防庁は事業者に対し、PFOSなどを含む泡消火剤を廃棄物処理法に基づいて処理するようパンフレットなどで呼び掛けてきた。自衛隊を含む事業者は、この方針に沿って処理してきた経緯がある。
政府関係者は「基本的に廃棄物として処理されてきた物質だ」とし、米側の要望を国が追認する難しさを指摘する。
放出を認めれば、今後、もし放出基準を作ることとなった場合にも「前例」として大きな意味を持つ。米軍は廃棄物として処理する際の課題としてコスト面を挙げているが「社会的責任があるという自覚を持ってほしい」と注文をつけた。
(知念征尚)