新型コロナウイルスの感染拡大で、病院に搬送できない患者を一時的に受け入れる入院待機ステーションへの搬送者が増え、緊張感が高まっている。職員を派遣する県内の各消防本部は、病院外にも搬送先があることで一般の救急搬送を維持しているが、新規感染者は度々、最多を更新しており、先行きに不安が募る。同ステーションで勤務経験のある救急救命士の男性は「感染者が増え続けると、医師や消防も助けを求める人の救命ができなくなる」と危機感を抱いている。
各消防本部は輪番制で救急救命士や隊員をステーションに派遣している。取材に応じた救急救命士の男性は今月中旬派遣された。医師の指示の下、運び込まれた患者の体温や血圧などを測り、状態を確認。患者は搬送時に酸素投与を受けていても、酸素飽和度は正常値より低く、受け答えも苦しそうだという。救急車で運ばれた先が病院でないことに戸惑う患者もいる。
夕方から患者が運び込まれ、午前0時には10床程度埋まったこともあった。その間、現場の職員らは患者の状態を映したモニターを注視する。酸素投与で患者の状態が落ち着いても無呼吸症候群で呼吸が止まったり、機器が外れるとアラームが鳴り、その都度、状態を確認しなくてはならない。
感染リスクの高いレッドゾーンでは、息苦しい完全防護服によるストレスも感じる。感染の不安も常にある中、男性は「病院に受け入れてもらえるまで、患者の容体が急変しないでほしい」と願うばかりだ。
県は18日、新たな待機ステーションを沖縄市に設置する方針を明らかにした。県内の各消防本部にも協力を求める考えだ。救急救命士の男性は「待機ステーションがあることで、消防も早期搬送が可能になり、自宅で不安を抱く患者への医療介入にもつながる。ただ、コロナ疑いの119番通報も増えており、感染者が増え続けることで、この態勢を維持できるか心配だ」と語った。
(嘉陽拓也)