沖縄尚学の“ミスターゼロ”が初失点したゲームは甲子園での苦い黒星となった。エースの當山渚は四回に先制を許してからも身上の「強気のピッチング」を貫いた。
長打力が自慢の盛岡大付打線に先発の當山は「9番まですごい打者がそろっている。終盤まで粘りの投球が大事」と内角をずばりと突く攻めの投球を続けた。リードした2年生捕手の前盛魁来は「渚さんの調子は悪くなかった。相手打線の方が上手だった」と巧みなバットコントロールを見せた相手打線の対応力を素直にたたえた。
四回に、上位打線に連打を浴びたが、バックの堅守もあり、2失点で踏みとどまる。その後も制球は乱れない。ミットに丁寧に白球を投じ続けたが、八回に2本塁打を浴びて降板した。
「後は任せろ」。マウンドを継いだ美里大雅に背中をグラブで軽くたたかれてベンチに戻った當山は「流れを取り戻せず悔しい」。無念の思いを抱きつつ、逆転を願って見守ったが、かなわなかった。
打線の不振を悔やむ様子はみじんもない。むしろ責めは自分に向けた。「打者が苦しんでも失点しなければ負けることはない。チームを勝たせる投手になりたい」。悔しさを胸に、新たなステージで左腕にさらに磨きをかける。 (上江洲真梨子)