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社長室業務は60キロ離れて…イオン琉球がリモート登用 地域活動と「何でも挑戦」


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沖縄県名護市大浦に住みながら、60キロ以上離れた同県南風原町にある本社社長室の業務を担う女性がいる。7月26日付でイオン琉球(大野惠司社長)社長室特命担当に就任した深田麻衣さん(39)だ。「キャリアアップの自律的意思」を持った社員の積極的登用を掲げる大野社長が、社長室業務である秘書職などを公募したところ、真っ先に手を挙げたのが当時イオン名護店のレジ主任兼教育主任だった深田さんだ。社長室業務を遠隔地勤務の社員が担うのは同社初だという。

「私生活を理由にキャリアアップを諦めるのではなく、ライフスタイルに合わせた働き方が選択できる社会になってほしい」と話す深田麻衣さん=19日、名護市のイオン名護店

千葉県出身の深田さんは2005年にイオン(千葉市)に入社し、CSRや営業企画などの部署を歴任した。結婚を機に15年に沖縄へ移住し、出向社員としてイオン琉球に勤務したが、17年に転籍した。

「好きなことは何でも挑戦したい。私生活の充実も譲れないと思った」

仕事と子育ての傍ら情熱を注ぐのが、人口減少が続く名護市東海岸(二見以北)の活性化だ。地域交流拠点施設わんさか大浦パークの代表を務める夫・友樹英(ゆきひで)さんと共に、持続可能なコミュニティーの在り方を模索する活動を続けている。

イオン琉球には転居を伴う転勤のない地域限定社員制度があり、正社員の約15%が活用している。深田さんも地域活動を続けるため同制度を選択したが、「本社での経験がある自分の強みを生かせる業務があればやってみたい」という思いは常に抱いていた。

折しも新型コロナの影響もあり、社内でもリモートワークへの移行が進んでいた。大野社長も当初は社長室業務を遠隔地勤務の社員が担うことは想定していなかったが、深田さんの採用を機に住む場所やライフステージによりキャリアアップへの制限が生じぬよう、「リモートでできる多様な働き方」をより一層推進する必要性に気づかされたという。

深田さんは週1回程度の本社勤務を除き、ほぼイオン名護店に出勤する。主な業務は政策立案や社内資料の作成、市場調査など。本社とのやりとりは、メールや電話、LINEワークス、ビデオ会議システム「ZOOM」を活用する。

通信面などでの課題もあるが、本社で決めたことが実際の現場でどう反映されているのか、店舗勤務だからこそ気づける部分もたくさんあると指摘する。

深田さんは「住む場所だけでなく、女性だから、育児中だからなどという概念を取っ払って初めて働き方のダイバーシティの実現と言えるのではないか」と語る。「誰もが私生活を大事にしながら能力を発揮し、社会に貢献できる職場環境が整えば、社員の積極性も増し、会社の力にもつながるはずだ」と考えている。

大野社長は「社員のやる気や思いを形にするサポートをしたい。名護にいるからこそできる意味と価値を見いだしてほしい」と期待を寄せた。

 (当銘千絵)