[日曜の風・室井佑月氏]怒ってもいい 五輪とコロナ


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室井佑月 作家

 この原稿を書いているのは8月17日。24日から東京パラリンピックが開催されるが、本当にそれでいいのだろうか。新型コロナウイルスが全国に拡大している今、ほかに政府がすべきことは山ほどあるだろう。

 17日の「日本経済新聞」に「緊急事態13都府県に、9月12日まで 分科会が承認」という記事があった。記事によれば、緊急事態宣言地域は13都道府県になり、宣言に準じた措置を取る「まん延防止等重点措置」は新たに10県を加えるという。西村康稔大臣は「桁違いの感染が広がってきている。医療提供体制も非常に厳しい状況だ」と語った。

 どうしてこんな状況になったのか? というか、こうなることを政府は予想していなかったのか? 一部、コロナの感染拡大は東京五輪のせいではないと言い張る人たちがいる。では、そういう人たちにこう聞いてみてくれ。「政府はコロナ対策に全力を尽くしたといえるか」と。

 東京五輪が「コロナは大丈夫」というニュアンスの、あたしたちに間違ったメッセージを送ったのは否めない。そして、東京五輪の医療ボランティアは7千人も募った。西村氏は医療提供体制が非常に難しいというが、なぜ彼らを五輪ではなくコロナ対策で雇えなかったんだろうと思う。

 同じく17日「琉球新報」に沖縄のコロナの家庭内感染が増え続け7割に達したという記事が載っていたが、2週間の祭りにうつつを抜かしている間に、感染者を隔離・看病する箱を用意し、そこで働らく医療従事者たちとも渡りを付けるべきだったのではないか。

 なお、8月12日、沖縄の玉城デニー知事が、自衛隊に災害派遣要請をしたところ、看護師1人、准看護師4人が派遣されることになった。

 昨年12月に大阪が派遣要請を出したときは国は7人の派遣を決めた。当時の大阪に比べ、8月の沖縄は2倍の感染者数だ。人口比なら10倍も大変な状況ということになる。

 怒ってもいい。いや、怒るべきだろう。

(室井佑月、作家)