「沖縄の人を笑顔に」車いす陸上T52出場の上与那原、トラック初メダルへ決意 東京パラリンピック


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
パラリンピック本番に向け、トラックを走り込む上与那原寛和=16日午前、沖縄市陸上競技場(又吉康秀撮影)

 24日に開幕する東京パラリンピックの陸上男子車いすT52の400メートル、1500メートルに出場する沖縄市出身の上与那原寛和(50)=SMBC日興証券=が、県内で最終調整に入っている。コロナ禍での開催を念頭に「沖縄の方々が一人でも多く笑顔になってもらえるよう、頑張りたい」と気合を入れる。4大会連続の出場で、2008年北京大会ではマラソンで銀を獲得したが、まだトラック競技でのメダルはない。「形があるものを取りにいく」と気持ちをたき付けている。

 2週間の三重県合宿で自らを追い込み、持久力と瞬発力を鍛え、13日に沖縄に戻った。県内は緊急事態宣言下で多くの競技場が閉鎖されているが、沖縄市から特別に許可を得て市陸上競技場で調整を続けている。本番が目前に迫る中で「今は疲れを残さないことが大事」と連日軽いメニューで練習を終える。

 初めに出場するのは400メートル。27日午前に予選、同日午後に決勝が行われる。ライバルは2019年の世界選手権を制した佐藤友祈と伊藤智也の日本勢に加え、リオパラリンピック王者のレイモンド・マーティン(米国)だ。自己ベストは59秒台だが、優勝争いに絡むには57秒台が必要と見る。「400メートルはレベルが高い。自分の力でどこまでいけるか試したい」と挑戦者の気持ちで臨む。

4大会連続で出場するパラリンピック車いす陸上について、抱負を語る上与那原寛和

 得意とする1500メートルは28日に予選、29日に決勝を行う。400メートルと同じ3人をライバルに挙げる。伊藤とマーティンがレースを引っ張り、佐藤が後半に加速する展開を描くが、中距離ならではの駆け引きも見込み「百パーセントきついレースになる。どんな展開でも耐えられる持久力が必要」と、表彰台に立つために強い覚悟で挑む。

 会場となる東京の国立競技場は5月のテストイベントで一度走っており、実際にこいでみて「重たい」と感じたという。トラックが、タイヤがより沈むゴム質だと言い、本番に向けてタイヤの重さや空気圧も細かく調整した。「まずは予選で重たいイメージを取り払いたい」と見通す。

 8日に閉会した東京五輪では、同じ沖縄市出身の喜友名諒(劉衛流龍鳳会)が空手男子形で県勢初の金メダルを獲得した。「ある意味プレッシャー」と冗談ぽく話した後、「いい結果を残してくれたので、パラにもつなげていきたい」と刺激を受けたよう。開会式が行われる24日には選手村に入る。「応援してくれる方も多い。持てる力を全て出し切り、いい報告をしたい」と笑顔で語った。

(長嶺真輝)