【深掘り】来年の名護市長選「辺野古」が最大争点 衆院選3区が試金石に


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 来年1月23日投開票の名護市長選に向け、名護市議の岸本洋平氏(48)が17日、正式に出馬を表明した。現職の渡具知武豊氏(60)は既に6月15日の市議会定例会の一般質問に答弁する形で出馬を表明しており、一騎打ちの構図がほぼ固まった。1998年の市長選以降、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設による新基地建設は最大の争点だ。「生物豊かな辺野古・大浦湾の海を守る」と掲げた岸本氏に対し、渡具知氏は「推移を注視する」と新基地建設への賛否を明らかにしない構えを続け、選挙戦略の違いが鮮明になっている。

 「まずは3区だ」。渡具知、岸本両陣営は10月21日に任期満了を迎える衆院議員選挙の準備に奔走する。名護市は「オール沖縄」勢力が推す現職の屋良朝博氏=立民=と、菅政権に近い元沖縄担当相の島尻安伊子氏=自民=が議席を争う沖縄3区の票田の一つ。衆院選の結果は名護市長選を占う試金石となるため、双方とも勢いを付けたい考えだ。

 ■財源確保

 辺野古移設問題と併せて争点になるとみられるのは子育て支援だ。

 渡具知氏は、米軍再編交付金の交付を受けて、2021年度は市一般会計予算の学校給食費事業で約2億9600万円、幼保育成事業に約3億8700万円を確保するなど、子育て支援策を充実させてきた。

 一方、岸本氏は給食費や保育の無償事業など、渡具知市政が米軍再編交付金を活用して始めた子育て支援策を継続すると表明しつつ、「再編交付金には頼らない」と表明した。

 「辺野古移設が進んでいるからこその再編交付金で、反対すれば即打ち切られるはずだ」。渡具知陣営の関係者は、事業継続と辺野古移設の進捗(しんちょく)はひも付けされていると語る。

 再編交付金ありきの事業だとの見方に対し、岸本氏は「国や県の子育て支援事業に加えて、市の事業見直しなどで財源確保は可能だ」と主張する。市政点検で事業費を確保する考えを示している。

 ■対照的

 渡具知氏は18年の市長選で「名護漁港の再開発と港湾機能を拡充し、高速船の導入とクルーズ船を誘致する」と公約に掲げたが、1期目は着手できなかった。今回も公約の「目玉」の一つに漁港の再開発を掲げるとみられ、経済振興に明るい“武豊カラー”を定着させたい考えだ。

 岸本氏は父・建男元市長の「誇りあふれる小さな世界都市・名護」構想にならい、文化や介護、農業、工業、水産、サービス業などを学べる拠点の設置を掲げる。「総合的な国際研修センターの創設を目指す」と強調しており、市の将来をけん引する「新たなリーダー像」を浸透させたい考えだ。

 辺野古新基地建設問題が最大の争点となり、全国的にも注目される市長選はこれまで、東京から来る知名度の高い政治家の応援演説も恒例だった。

 だが、新型コロナウイルスの感染収束が見通せない上、政府や県のコロナ対策への批判などもあり、「首相や知事の応援が支持拡大につながらない可能性もある」(自民党関係者)との見方も広がっている。
 (喜屋武研伍、松堂秀樹)