「保育崩壊が目の前に」…登園減らない保育園・学童施設 公的支援訴える声


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本島南部の保育所。室内は換気されているが、マスクを外して遊んでいる子どもも多い=18日

 県内で10歳未満の新型コロナウイルス感染者が急増する中、保育所や学童関係者に不安と苦悩が広がっている。医療従事者など社会生活を維持する業種を除いて登園自粛が求められており、去年の緊急事態宣言中は預かる子どもたちの数が減少した。しかし今年は去年と比較すると大きく増加しているという。保育士や園児が感染者や濃厚接触者となり、一部の市町村では休園が相次ぐ。「保育崩壊が目の前に迫っている」と、園長らは頭を抱える。

 本島中部の認可保育園。60代の園長は23日、園内で感染が拡大し保育士も足りなくなる「保育崩壊」の懸念を本紙取材に何度も訴えた。昨年の緊急事態宣言時の利用者は全体の約2割だったが、「今日は約8割いる」とため息を漏らした。「保育士が濃厚接触者や感染者として休む場合もある。いつ保育士が足りなくなるか不安でたまらない」と話した。

 那覇市では19日、保育の対象を医療職など一部の職種に就く家庭の子どもらに限定する「特別保育」の実施を呼び掛けた。市内の首里当蔵保育園では23日、利用者数が9割から6割に減った。呼び掛けの効果は表れたが、園側の悩みは他にもある。大城祥恵園長(43)が頭を抱えているのは、まだワクチンを受けられていない若い保育士がいること。「副反応で休む可能性を考えると、日時を分散させて接種させる必要がある。しかし予約が取れない」と話し、行政の協力を訴えた。

 本島南部で保育所と学童を運営する園長は「エッセンシャルワーカーでなくても子を預ける必要のある人はいる。コロナ禍で経済的困窮者が増えた可能性もあり、どうしても働かざるを得ない保護者もいる。職場の協力も必要だろう」と指摘する。

 近隣の放課後児童クラブ(学童)園長は、保護者に自粛を求めづらい状況があると話す。「今回の緊急事態宣言での休園分の補償は、十分にできない可能性があると行政側から言われた。自粛分のお金を保護者に返せないかもしれないのに、自粛を強く求めることは難しい」。補償の在り方は自治体によってばらつきがあり、園長は「子どもの命と保育施設の運営を両立させるためには、公的支援がどうしても必要だ」と訴えた。

 園長らが登園自粛を強く訴える一方で、「どうしても子どもを預けなければならない親がいることも分かってほしい」と那覇市在住の女性会社員(39)は言う。家には乳幼児2人と小学生がいて、育休中ではあるが「ストレスで子どもを怒りやすくなっていたため、園を利用していた」。20日、2歳の娘が通う保育所から特別保育実施の便りを受け取り、家庭で子どもをみることにした。「利用者にはひとり親や、非正規雇用の親もいる。働かざるを得ないために園を利用している。理解を示してほしい」と話した。
 (嘉数陽)