【深掘り】「日本をばかにしている」政府関係者もいら立ち 米軍がPFAS汚染水放出を強行するまで


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
イメージ画像

 在沖米海兵隊は26日、米軍普天間飛行場に貯蔵されていた有機フッ素化合物(PFAS=ピーファス)を含む汚染水を処理した上で、公共下水道に放出した。日米両政府が協議を続ける中での強行に、日本政府や県、宜野湾市の関係者は26日の放出開始に「寝耳に水だ」と口をそろえた。政府や県、市は26日、立て続けに米軍に抗議し、中止を求めた。だが海兵隊は独自の処理システムの性能を誇り、ドラム缶320本分の処理水を流すと説明している。

 政府や県、市は、米側との協議は「継続中」との認識だった。7月に米軍の呼び掛けで処理済みとされる水を採取しており、その分析結果が出そろったばかりだ。26日には日米合同委員会でこれらの調査結果を踏まえて話し合うことになっていた。

■寝耳に水

 米軍が県などに放水を伝えたのは、実行予定の約25分前だった。26日午前9時5分ごろ、県と沖縄防衛局、外務省沖縄事務所に在沖米海兵隊から入ったメールには、9時半ごろに独自システムで処理した水を放出すると記載されていた。

 米側から連絡を受けた防衛省関係者は「手順が乱暴だ」と怒りをあらわにした。別の関係者は「米軍には政治感覚がないのか」と不満を口にした。

 県幹部の一人は「あまりにも唐突で、信頼関係を損なう。一方的だ」と非難した。別の県幹部は「基地内から下水道に流されれば、状況を確認することも、止めることもできない」と頭を抱えた。

 宜野湾市幹部もいらだちを隠さない。「開いた口がふさがらない」「そこまでして地元の信用を失いたいのか」。米軍は市に「結論が出るまで流すことはない」などと説明していたが、その約束は「ほごにされた」(松川正則市長)形だ。

 市議会は7月に汚染水を基地外へ放出しないよう米軍に求める決議と意見書を全会一致で可決していた。上地安之議長は「寝耳に水で憤りも感じる」と述べた。

■「科学的に証明」

 政府関係者によると、日本側は、下水道への放出を認めない姿勢で話し合いに臨んだ。松川宜野湾市長が25日に状況を確認した際、防衛省は日米で放出しない方向で検討を続けていると説明した。

 米側との交渉の中で、日本政府は合意なく放出すれば「地元との関係が破綻しかねない」と再考を迫った。ためている水が台風で漏れ出る恐れがあると主張する米側に、日本が一部を引き取って焼却処分するという代替案まで示して説得を続けた。

 米側はPFAS濃度が日本の暫定目標値より低く「安全性は科学的に証明されている」と繰り返し、折り合わない状態が続いていた。

 26日の放水開始を受け、政府と県、市はそろって抗議したが米軍は放出を止めておらず、日米関係の不平等ぶりも鮮明になった。

 別の政府関係者は「日本をばかにしている」と反発。放出中の処理水が片付けば、米側は残る汚染水の処理に入るとみられる。「焼却処分に持っていかなければいけない」と気を強く引き締めた。
 (明真南斗、知念征尚、金良孝矢)