【深掘り】豊見城署の令状なし捜索はなぜ起きた 県警OBはどう見る?


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豊見城警察署(資料写真)

 窃盗事件の容疑者の男性が豊見城署に逮捕され、那覇地検へ送致された後に一度釈放され、検察官が緊急逮捕し直すという、異例の事態が起きた。捜査関係者によると、豊見城署の警察官が任意捜査である所持品検査の範囲を超え、令状によらない「捜索」で被害品を探したという。県警のこの捜査について、検察は事実上の「捜索」ととらえ、違法性が高まったと問題視したという。県警OBは「送致に至るまでに県警内で捜査の問題点に気付けなかったことも問題だ。県警の信頼にかかわる捜査事故だ」と指摘する。

任意捜査

 窃盗事件は8月11日午前、那覇市内の宿泊施設で発生した。捜査関係者によると、被害関係者からの通報で警察官が現場臨場した。目撃情報などから、宿泊していた男性の関与が浮上し、職務質問を行い、室内を探した。警察官はこの男性がチェックアウトする際、再び職務質問をかけ、所持品検査などを実施した。被害品を見つけて緊急逮捕した。

 県警は取材に「捜査の具体的な内容については回答を差し控える」とし、警察官が当時、どのように対応したかの詳細を明らかにしていない。一方、捜査関係者によると、送致を受けた那覇地検は報告書などから、警察官の対応について、裁判所からの捜索差し押さえ許可状が必要な「捜索」に該当すると判断したという。令状なく強制捜査を行った形となり、捜査の違法性が色濃くなった。

チェック機能

 捜査などで強制的に行われる処分は、個人の身体や持ち物に制限を加えるものだ。こうした手続きが乱用されないよう、令状がなければ強制的な処分はできない「令状主義」がとられる。憲法に明記されているほか、刑事訴訟法でも令状に基づいた捜索を規定している。

 地検は令状に基づかない事実上の捜索で得られた証拠品が公判で排除される可能性があると懸念したとみられる。

 県警OBは今回の捜査について、「本来なら署の幹部が送致決裁を回す段階で捜査の問題点に気付かなければならない」とし、県警幹部によるチェック機能が働いていなかったと指摘した。その上で「地検の県警の捜査に対する信頼が損なわれかねない事案だ。適正捜査のために再発防止を徹底すべきだ」と強調した。

 (当間詩朗)