紅芋の被害防止、農家から期待の声 基腐病の診断新技術


社会
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サツマイモ基腐病に感染し、茎基部が黒くなった株(農研機構提供)

 サツマイモ基腐病(もとぐされびょう)は東アジアを中心に世界各地で発生しているが、国内では2018年に沖縄本島南部の畑で初めて確認されて以降、現在は19都県にまで広がっている。予防効果のある農薬はあるが、病害そのものに効果的な農薬や技術はまだ研究段階だ。県内の生産農家からは「病害を早期発見できればまん延防止につながる」と期待の声が上がる。

 県農林水産部によると、県内で感染が確認されているのは紅芋がほとんど。土産菓子の原料に使う紅芋品種「ちゅら恋紅」の被害が全体の約75%を占めるという。被害が特に深刻だった19年は、県内のサツマイモ生産量が過去最少の3540トンまで落ち込んだ。県の担当者は「原因は複合的だが、基腐病が大きな要因の一つだと考えられる」と述べた。

 農研機構の研究にも協力した県農業研究センター病虫管理技術開発班の河野伸二氏によると、国内には以前から類縁種である「サツマイモ乾腐(かんぷ)病」菌が分布し、主に塊根(芋)が貯蔵中に腐敗する被害が出ていた。一方、基腐病は生育期に畑でまん延するため、乾腐病より深刻な被害を産地にもたらす。

 河野氏は「似通った病気を正確に識別できれば、被害の実態がより詳細に分析できる。基腐病に関する防除対策や研究の加速化にもつながるはずだ」と述べ、新たな分析手法開発の意義を説明した。

 自身の畑で基腐病が確認され、多額の損失が出た紅芋農家の山内武光さん(75)=読谷村=は「基腐病には毎年、悩まされている。今回の技術開発を機に研究が進み撃退法が確立すれば、まん延防止につながり農家の所得も上がる」と期待を寄せた。
 (当銘千絵)


<用語>サツマイモ基腐病(もとぐされびょう)

 糸状菌を原因とする病気で、ヒルガオ科の植物を宿主とするが、栽培作物の被害はサツマイモのみとされる。発生すると茎や芋の部分が腐敗し、進行すると株が枯死する。病気にかかったつるや芋を植えることで、土壌が菌に汚染され感染が広がる。国外では台湾や中国、アフリカ大陸や南米などで発生している。