prime

猫虐待死が相次ぐ名護 専門家「社会への不満か」 愛護団体「放置すれば事件も」<ニュースのつぼ>


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
路上の猫が虐待される事案が相次いでいる名護市の中心市街地周辺=8月27日

 【名護】名護市の中心市街地で8月に入り、猫の虐待死が少なくとも4件、相次いで発生した。被害に遭った猫は顔をつぶされたり、農薬のような液体を吹き掛けられていたりしていた。名護署が周辺を巡回するなど警戒しているが、現在も犯人は見つかっていない。動物愛護団体関係者らは「住民も不安に感じている。再発防止のために行政は防犯カメラを設置してほしい」と訴える。

 「またです」。18日早朝、名護市内で猫の保護活動をしている市民のネットワーク「にゃごねっと」(鈴木雅子代表)のグループラインで新たな被害が報告された。通報で臨場した名護署員が死骸の状況を確認する中、沈痛な表情で死骸を回収したにゃごねっとのメンバーら。血を吐いて硬直した猫は、避妊去勢手術をして元の場所に返す「TNR事業」で既に避妊去勢手術を施された猫だった。

 防犯カメラ

 動物愛護団体などは猫を飼う際の大原則である「完全室内飼育」を再認識し、最後まで責任を持って飼うよう啓発活動を実施する。それでも、飼い主の死亡などで面倒を見る人がいなくなり、増えてしまった猫の命は守ろうと、にゃごねっとなどはTNRの一環として猫の捕獲活動を展開している。

 動物病院で避妊去勢手術を受けて元の場所に戻された猫には目印がある。耳の端をV字にカットした「さくら猫」がその印で、周辺の子どもたちがかわいがるなど、地域の猫として暮らしている。

 こうした猫まで狙われる事態に、市民からは防犯カメラの設置を求める声が複数、名護市に寄せられている。同市は2017年度に中心市街地に5台の防犯カメラを設置したが、死骸は防犯カメラの設置されていない場所で発見された。市の担当者は「新たに設置するかどうかは今後の検討事項になる」としている。

 「孤立防ぐ仕組みを」

 人目に付かない時間帯に発生する事案だが、事件が報道された後も支援団体や社会を挑発するかのように新たな死骸が見つかる。こうした状況に、犯罪心理に詳しい山入端津由沖縄国際大学名誉教授は「自分を受け入れてくれない社会に対するいらだちを、小動物にぶつけて解消しつつ、社会に対する不満をアピールする目的もあると考えられる」と指摘する。

 動物愛護団体からは、県外で未成年者が起こした凄惨(せいさん)な事件でも、殺人の前に猫を殺していたことを例に、「放置すれば名護でも同じ事件が起きかねない」と不安視する声も挙がる。

 山入端氏は「必ずしもエスカレートして殺人を犯すとは限らないが、自分が抱える悩みやつらさを家族や友人と共有できない人が、自分の世界に閉じこもり、残虐性を許容する仲間と一緒になることでこうした事件が起きやすい」と説明する。その上で「大切なのは少しでもそうした人たちを孤立させないことだ。民生委員の見回りを充実させたり、支援体制を強化したりするなど、長期的な再発防止のための取り組みが行政や地域社会に求められている」と述べた。
 (松堂秀樹)