辛淑玉氏への名誉毀損認定 「ニュース女子」訴訟、東京地裁判決 制作会社に550万賠償命令 


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 【東京】沖縄県東村高江周辺の米軍ヘリコプター発着場(ヘリパッド)建設への抗議行動を取り上げた番組「ニュース女子」で、名誉を傷つけられたとしてヘイトスピーチ反対団体の辛淑玉共同代表が、制作会社のDHCテレビジョンなどに1100万円の支払いを求めた訴訟の判決で、東京地裁(大嶋洋志裁判長)は1日、名誉毀損を認め、同社に550万円の支払いと同社ウェブサイトへの謝罪文の掲載を命じた。番組司会者でジャーナリストの長谷川幸洋氏への名誉毀損の訴え、長谷川氏からの反訴はいずれも棄却した。

 大嶋裁判長は、被告が制作した番組について、「原告の名誉を毀損(きそん)するもの」で「不法行為責任を免れない」と判示した。

 訴訟は2018年に提起。17年1月、東京など首都圏で放送される東京MXテレビで2回にわたり放送された高江ヘリパッド建設への抗議活動を取り上げた番組の内容が、「社会的評価を低下させる」ものだったとして、辛氏が制作会社と司会者の長谷川氏に損害賠償などを求めていた。

 判決では、番組内容について、抗議活動が「暴力を含む犯罪行為を伴う過激な運動」で、辛氏が「裏側から反対運動をそそのかし操作している人物」という印象を与えるものだと指摘。制作会社側が「裏付け取材」をしていない点も踏まえ、その内容について「事実を認めるに足りない」として辛氏への賠償責任を認めた。また、辛氏の「精神的損害が重大」とも指摘し、ウェブサイトへの謝罪広告の掲載も命じた。

 一方で、原告側が求めた動画配信サイト「ユーチューブ」などでの番組配信の停止と削除については、「著しく回復困難な損害を被るおそれがある」とまで認められないとし、長谷川氏への訴えは「(番組の)制作や編集には関与していない」としていずれも認めなかった。

 判決後の会見で、辛氏は「人をおとしめる行為の抑止力になり画期的だ」と評価した一方、長谷川氏への請求が棄却されたことなどを不服として控訴する考えを示した。

 制作会社は本紙取材に、同日にネット配信した番組で「詳細を配信している」とした。番組内では、同社関係者が「不当判決」などと主張し、控訴の意向を示した。

 東京MX広報宣伝部は「本件に関しては弊社からのコメントは控える」と回答した。