県花デイゴを枯らす害虫デイゴヒメコバチの天敵として、県が導入を検討するデイゴカタビロコバチが県内19市町村で繁殖していることが確認された。県が8月30日発表した。カタビロコバチはヒメコバチのみをえさとし、在来種への影響は確認されていない。県は生物農薬として申請する手続きを進めており、登録後に広域で放虫する計画だった。放虫を待たず、関係者の想定以上の速さでカタビロコバチが生息域を広げた。
ヒメコバチ、カタビロコバチともにアフリカ原産。ヒメコバチはデイゴの茎に産卵して虫こぶを作り、その中で幼虫が育つ。カタビロコバチは虫こぶの上から産卵し、ヒメコバチの幼虫やさなぎを食べて育つ。カタビロコバチで駆除を進めたハワイを参考に、県でも導入を検討しているところだった。
カタビロコバチを飼育する、糸満市にある県の施設敷地内のデイゴに2020年、この成虫が見つかった。屋内から逃げ出した可能性があるとして、県内全域のデイゴ137本から虫こぶを集めて調べると、64本からカタビロコバチが見つかった。本島は糸満市から国頭村まで、離島は石垣市や多良間村でも確認された。
県はカタビロコバチを糸満市、名護市で飼育し、宮古島市下地島では野外で放飼(ほうし)試験をしている。これらの施設から逃げて広がったと考えられる。県は「宮古島では広がると予想していた」とするが、海を挟んで多良間村や石垣市まで及んだ。人の移動に付随したほか、台風や気流で飛ばされた可能性もあるという。
在来種などへの影響は確認されていないが、想定外の広がりに県では他の動植物への影響を調査し、結果を確認してから生物農薬としての申請手続きを再開する方針だ。